花言葉の約束 空花 /作

【36】
優奈目線・プロローグ
「あんたなんかもう信じない」
あの時の私の声が、耳から離れない……
本当は大切な娘だと分かっているのに、また虐待してしまう自分が嫌だ。
イライラ、仕事の疲れ、近所や仕事場での孤立。
よく自分を抑え切れなくなって、つい娘に当たってしまい、また、してしまった……と後悔してもまた繰り返してしまう。
もう、やってしまったことは取り戻せないのに。
頼れる人も居ない。
誰にも相談できない。
自分が変わらなきゃいけないのに、それが出来ない。
辛い。
でも、一番辛いのはあの子。
今すぐあの子の傍にいって、伝えたい。
「七海、今まで酷いことして本当にごめんね。許さなくてもいい。でもこれだけは伝えたい。私のところに産まれてきてくれて、ありがとう」
***
……また、朝が来てしまった……。
私は、朝が好きじゃない。朝は眩しすぎるから。
曇りの日でも、眩しいと思う。
空みたいに広い心が持てればいいのに、いつもそう思ってた。
いつも笑顔で居たいのに。
娘を大切にしてあげたいのに。
そんなこともできない。
"母親失格"
それは私だ。
七海――ごめんね――。

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