花言葉の約束 空花 /作

【24】
(※まだ七海の回想シーンです)
私はその後、トイレに行ってすぐ寝た。
全然眠れなかった。
そして、お父さんの死から一ヶ月くらいたった日の朝――
――シャッ
カーテンを開ける音と共に、まぶしい光が私の体を包んだ。
すがすがしい朝だった。
……天気が良くても、私の心はモヤモヤに包まれたままだった。
お父さんがどうしていなくなったか、理解できなくて。
お母さんはまだ悲しい目をしていた。
「七海……起きなさいっ!!」
怒鳴るように言ったお母さんの声。
私はびくっとしてすぐに起きた。
お母さんは……私に怒鳴ることなんてほとんどなかったのに。
悲しみと怒りに包まれたお母さんの目と声。
いつもとは違う。
それは、幼い私でもよく分かった。
私はその一言でお母さんが少しだけ怖くなった。
でも、日が経つにつれてお母さんはもっと怖くなった。
言葉だけじゃない。
――全てが、怖くなった。
今までは優しかったのに……。
お父さんの死で突然変わってしまったお母さん。
その日から―― 私は、「真っ暗な世界」に突き落とされたんだ。
その時知った。
神様は、優しくなんかないって。
その日からお母さんは変わってしまった。
笑顔すらも見せない。
お母さんの中から「笑顔」という存在が消えてしまったかのように。
いつも、いつも……。
そんな「お母さん」になってほしいなんて私は願ってない。
私は、「前の優しいお母さん」になってほしいと思っているだけ。
それなのに、お母さん、
どんどん怖くなっている――。
何で?
どうしてなの?
あの日から、幸せだった世界がどんどん崩れていく。
皆、皆――。
友達も、離れていくような気がして。
いつか、「オマエナンカトモダチジャナイ!」
そう、言われるような気がして。
怖くて。怖くて。
どうせ崩れるなら、
自分で壊してしまえ。
そして、私は自分から友達を捨てた。
いつだって一人ぼっちで、必要のある時以外は話さない……。
そんな日々が続いて、皆、私には近づかなくなった。

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