花言葉の約束  空花 /作



【46】



幸せな過去の夢は、だんだん"現在"に近くなって、まるで全部が嘘だったみたいに、幸せは消えていった。

「何で七海はこんなことも分からないの!?」

「ごめんなさい……お母さん」

「ごめんなさいで何でも済むと思ってるの、七海!!」

「お母さ……」

――バシッ

「いい? もう二度とこんな点数取らないで!」

お母さんの一言一言が胸に突き刺さる。

時が経つごとに増えていく心の傷。

何で……こんな風になっちゃったんだろう。


***


夢はそこで終わった。

長かったのか短かったのか、私には分からない。

だけど、こんな夢見なきゃ良かったって思った。

もう思い出したくないことばっかり夢に出てきて。

夢の中でも、早く朝になれって思った。

でも――また、殴られるかもしれない。

朝になったって、結局同じなんだ。

毎日同じように時が過ぎて、また殴られたりして。

他の普通の家庭は、きっと楽しいんだろうな。

私は楽しくなんかない。

逆に辛いよ……。





優奈目線

午前7時にセットした目覚まし時計が鳴り、私は目を覚ました。

とりあえず、少しは寝れたみたいだ。

今日も仕事、か。

相変わらずな私の朝。

急いで支度をして、ご飯の作り置きをして、家を出る。

いつもと変わらない朝の風景。

そして、空っぽのテーブル。

三脚のイス。

昔は――家族3人でご飯を食べて、テレビを見たりして。

それが私達の"普通"だったけれど、今はもう違う。

"普通"になんて、もう戻れないのかもしれない。