花言葉の約束  空花 /作



【55】



「未来……なんて……」

「私にはないって思ってるの?」

そう。

私には、きっとないんだ。

それでいい。

「なくていい、未来なんか」

「また自.殺しようとする気なの?」

本当はいつだって死にたかった。

もう戻るはずのないお母さんが戻るって信じてるのが嫌で。苦しくて。

バカみたいに信じてる自分なんかいなければいい。

本気でそう思った。

琴音だってとっくに分かっているはず。

お母さんがもう戻るはずないって。

「二度とお母さんが戻ることはないってことくらい琴音でも分かるでしょ!? もうこんなのは嫌なの!」






優奈目線

「現実逃避」

少しずつ動いていく雲を見上げながら、私は呟く。

きっとその言葉が今の私にピッタリなんだろう、と思う。

これで、良かったんだろうか?

私がこのまま消えてしまえば良い。

川にでも飛び込んでしまえば良い。

……自問自答してみる。

それは既に知っている答え。

私は街外れにある川の近くに座りながらこう考えてみた。

ここは、家からどれくらい離れているのだろうか。

多分、かなり離れているのだろう。

私は自問自答する。

私の家の近くは色々な建物が並び、とても賑やかな街なのに、ここは周りに建物も見当たらない。

同じ市のはずなのに、こんなに静かで人気がないところがあるなんて、私は今日まで思いもしなかった。

私は冷えて赤くなった手で膝をさすりながら川を眺めた。

静かに流れていくその川。

ここに飛び込めばいいんだ。

立ち上がり、私は川へと近づいていく。

――これで、終わりだ。

私は強く目を瞑る。




このまま私は消えていくはずだった。

なのに、どうして?

どうして……出来なかった?

私は……消.えたいはずだったのに。

やっと解放されるはずだった。

私も、七海も。