おいでませ、助太刀部!!   野宮詩織 /作



第1章 「助太刀部? なにそれ、食べられるの?」(part2)



「んっ……」

相斗によって沈められた俺が目を覚ましたのは割と早かったらしく、壁にかかった時計の情報を信じるならば約15分程度しか経っていない。

「あっ!! 翔、おはよ~。 というか、こんにちは?」

疑問形で挨拶をしてきたのは、15分前に優しげな笑みを浮かべたままスタンガンをあててきた相斗だった。
とりあえず、どうしても言いたいことを伝えておこう。

「今すぐ、縄をほどけぇーーーーーーーーーーーー!!」

そう、やっと目が覚めたと思ったら、椅子に縄で固定されていたという漫画のような状態になっていた。
「ヤクザの兄ちゃんに海か何か沈められるのか?」と思ったのは内緒の話だ。
寝ぼけてただけなんだ!! いや、まじで。

「およよっ? 岡崎っ、おはよーっ!!」

身動きのとれない俺に元気よく挨拶してきてくれたのは深間秋牙だ。
通常時なら普通に返事を返すが、俺は今、普通じゃない状況下に陥っている。 一体、どうするべきなのだろうか……。

「秋牙さん、スタンガンちゃんと役にたったよ。 はい、返すね」

そう言って、相斗は深間に向かってスタンガンを投げ渡す。
「返すね」……?
えっ!? あのスタンガンは深間のものだったのか!?

「それで、僕は今、助太刀部に入ってるんだけど翔も入らない?」
「断る!!」

気絶する前と同じ返事をする。

「入部してよ~っ! 部員が少なくて、困ってるんだよねっ」

深間にも頼まれるがそんな事は関係ない!!
他人をスタンガンで気絶させたあげく椅子に縄で括りつけるような奴がいる部活には「入りたくない!」と思うのが普通の人の反応だ。

「失礼するぞ」
「部活調査に来ました」

入口の前には同級生が2人立っていた。 生徒会庶務の桜歩と四月朔日玄だ。
ちなみに、部活調査というのは、「その部活がちゃんと活動をしているかどうか」などを調査するもので、生徒会と風紀委員が共同で行っている。
部活に所属したことが無いため、よく分からないが、意外と審査は厳しいらしい。

「……すまない。 邪魔したな」

桜と四月朔日が気まずそうに扉を閉める。
……これ、盛大な誤解を招いてねぇーか?

「待て!! 桜!! 四月朔日!! 助けろ!!」

願いが届いたらしく、扉が再び開く。



しかし、開いた扉は地獄へと繋がっていた……。