おいでませ、助太刀部!!   野宮詩織 /作



【part1.ニーソとパッドはメイドとセットです】



「見てみてっ、似合うかなっ?」

目の前でスカートをはためかせながら、くるくると回っている深間は、いつもおろしている茶色いショートヘアがウィッグだかエクステだかで、金髪の少し長めのサイドテールになっている。
服も制服ではなく、スカートに少しボリュームのある、赤を基調としたフリフリの衣装で、これ以上ないくらいに深間のロリっぷりを強調してくれている。

「似合うわ~。 秋牙ちゃんにはフランド○ルの衣装が似合うと思ったんだけど、正解だったわね~」

俺の横で27歳、独身、更にはとんでもないオタクという困った大人代表な助太刀部の顧問、稲田先生が満足げに深間のコスプレ姿を眺めている。
この人が出てくると、伏せ字とツッコミが必要になってくるため、性格は良い人なのだが、少し苦手だ。

「稲田先生、衣装のサイズが少し合わないんですけど、どうしたらいいですか?」

現在、男子更衣室と化している倉庫から相斗が上半身裸という、誰に向かってのサービスなのか不明な状態で出てきた。
普通の女子なら相斗の外見的にキャーキャー言って喜ぶだろうが、生憎、ここに普通の女子はいない。

「あら~? 丈が足りなかったの~?」

相斗は191cmと驚異的に身長が高いから、時々、服の丈が足りないというときもある。

「いや、逆です。 ちょっと丈が余ります」

え!? 相斗で丈が余るって、どんだけデカいんだ!?
その前に、そんなサイズのコスプレ衣装に需要があったことに驚きを隠せない。

「余ってるんなら、詰めるから大丈夫よ~。 この衣装のキャラ自体の背が高いから、大きいサイズがあったのよ~」

そのまま、稲田先生が生き生きと相斗が着る衣装のキャラについて、語り出す。
うん、これは聞き流そう。

「相斗、お前は何の衣装を渡されたんだ?」

明後日の文化祭前に全員に試着して欲しいと言って、今さっき、稲田先生が各自に衣装の入った紙袋を配ったため、実は誰がなんの衣装を着るのかは把握できていない。

「なんかね、バーテンダーだったよ。 渡された時に、何か色々言われたんだけど、途中で思考停止しちゃったから忘れちゃった。 翔は何の衣装だったんだい?」

経緯(いきさつ)を軽く説明してから、相斗が尋ねてくる。

「…………」

相斗に、無言で稲田先生から渡された衣装の入った紙袋を渡す。

「ん? 無言だけど、紙袋の中見ていいのかい?」

相斗の言葉に無言のまま頷く。
その直後、相斗が紙袋の中をのぞき込む。
しかし、暗くてよく見えなかったらしく、紙袋の中から衣装を取り出そうとガサゴソと漁り始める。

そして、紙袋から紺と白のコントラストが鮮やかな衣装が現れる。

「……これは笑っていいのかい?」
「止めろ、俺、既に傷ついてるから」

それ相応に傷ついている俺を尻目に、紙袋から出てきた衣装――メイド服を手に持ったままの相斗がゲラゲラと笑い出す。



最近、こんなのばっかりな気がしました。