おいでませ、助太刀部!!   野宮詩織 /作



第2章 「え!? 本当に依頼とか来るのか!?」(part10)



「そろそろ、昼飯にしませんか? あんまり遅くなると混んじゃいますし」

俺の提案に他の3人は快諾してくれた。
ぶっちゃけ、これ以上連続で走馬灯を見るような状況に陥ると、三途の川を余裕で渡れてしまいそうだったから、「昼飯を食う」という大義名分の元に休もうという考えから出した提案だ。

俺が死んだら、作戦遂行が面倒くさくなるだろうしな。
俺も死にたくないし。

* * * * * * * * *

「笠井先輩、相坂先輩。 食後に絶叫系は流石にまずいので、あれに乗りましょう」

昼飯の後、伊野が当初の計画通り、絶叫系以外のものを提案した。
えーと、『とある馬鹿の完全冷凍(パーフェクトフリーズ)』か…。 ついに、2つ混ぜてきやがったな!

いい加減、突っ込むのが面倒くさくなってきたぞ!!
というか、どんなアトラクションなのかタイトルから微塵も想像できない。

「う~ん。 食後だもんな……。 それにしようぜ」
「この後、また絶叫系のアトラクションに乗ってもいいなら、構いませんわ」

先輩2人は不承不承といった形だが、OKを出してくれた。
笠井先輩の提案は遠慮したいが、止む負えない……。

というか、笠井先輩、深間の言っていたことをすっかり忘れているな?

「久しぶりに安全なものに乗った気がする……!!」
「そんなに危険な乗り物があったらニュースになっているはず」

『とある馬鹿の完全冷凍』なるアトラクションから降りたあとに、俺が言った一言に伊野が突っ込んでくれた。
お前らのせいで、こんな感想が出てきちゃったんだよ……!!

「先輩、ここから俺と伊野、笠井先輩と真先輩で別行動しませんか?」
「何でだ?」

俺の提案に真先輩は不思議そうな顔をしたまま、尋ねてきた。

「いや……、実は俺、絶叫系が苦手で……」

嘘は一言も言っていない。
だが、これは先輩たちを2人っきりにするための作戦だ。

「そうだったのか!? そしたら、俺、ものすごい嫌なことを強制してたんだな……」
「いえ、気にしないでください」

「全くもって、その通りだ」とか言ってやりたいが、マジで凹んでいるロップイヤー的な状態の真先輩に面と向かって、そんなことは言えない。
俺は寮生だから無理だけどな。
「ツッコミどころはそっちじゃない」とか言うんじゃねぇーよ!!

「先輩、岡崎は私が面倒をみるので安心して下さい。 少し乗り物酔いをしているだけなので2時間もあれば治ると思います」

伊野もフォローをいれてくれた。
ちなみに、何故、2人っきりにこだわるかというと、2人っきりになっている間に笠井先輩が告白するという予定だからだ。

「それなら、悪いけど、俺らは2人で回らせてもらうぞ。 本当に済まん」

最後にもう1度謝り、真先輩は笠井先輩と共に人ごみヘ紛れていった。
がんばれ……! 笠井先輩……!

「岡崎、あと1時間ぐらいしたら帰る」
「分かってる。 土産買いたいんだろ?」
「分かってるなら早く来て」

1時間で土産を選ぶとなると、けっこう急がないといけないな。
1時間で帰る理由は、帰りの電車でも2人っきりにしたいからだ。
ちなみに、俺の乗り物酔いが悪化したという理由をつけて帰るらしい。

「もっと、早く歩いて」
「はいはい」



余談だが、伊野は本当に丸1時間、お土産を選ぶことに費やした。