おいでませ、助太刀部!! 野宮詩織 /作

第4章 「男の娘ですけど何か?」(part1)
「やっと……、やっと見つけました!!」
「ヤバいっ!! 俺、マジで帰る!!」
さっき、「入部するかも」とか言ってたけど何でこいつが此処にいるんだ!?
まだ書類書き終わってないんじゃねぇーのか!?
~翔、回想~
4月13日 午後12時38分
「止めてくださいっ!!」
俺は声が聞こえた方を見てみた。
そこには、いかにもな感じのヤンキー(多分、先輩)が、メイド服を着ている女の子をとり囲んでいた。
雰囲気的に友達という訳でもなさそうだし、ましてや血縁関係であるという訳でもなさそうだ。
そもそも、ここは人通りが少ない。
通るのは食堂に行く(もしくは食堂から帰る)2-Aの生徒だけだ。
「いいじゃねぇーか。 別にカツアゲしようってわけじゃねぇーんだしよ」
「そうだぜ。 問題ないだろ?」
絵面的にはすごい問題がある気がする。
ものすごいカオスだしな。
まぁ、ここはこの昔ながらのヤンキーを追い払うべきだよな。
とりあえず、一番近くにいた奴に飛び蹴りをいれてみる。
俺のとび蹴りをくらうとともにそいつは階段の踊り場まで吹っ飛んでいった。
「ヒロシィィィ!? 何にすんだゴラァ!!」
「すみません、手が滑りました」
「手!? 思いっきり足が出てただろうが!!」
昔ながらのヤンキー先輩は律義に突っ込んでくれた。
吹っ飛んで言った奴の名前はヒロシというらしい。
無事に成仏できたか少し不安だ。
でも、今はそんなことは割とどうでもいい。
とりあえず、目の前の女の子を助けることが最優先だろう。
「死に晒せ、このボケがぁぁぁ!!」
昔ながらのヤンキー先輩、流石というべきか武器も昔ながらの釘バット。
あなたが落としたのは、このきなこ棒ですか? それともこのカルメ焼きですか?
そんな感じの時代背景の元にいないとこいつらは時代遅れもいいところな電波集団だ。
……それ相応の時代背景でも電波集団かもしれないが。
そんなことを考えながら、昔ながらのヤンキー先輩Bが振りおろしてきた釘バットをかわした。
これでも、反射神経には自信がある。
桜とか花薇のような特殊なタイプの攻撃はかわせないが、この程度なら簡単だ。
「校内でそんなもの振りましたら危ないだろ? 校外でも十二分に危ないけどな」
「一回、かわせたからって調子に乗るんじゃねえよ!!」
「それなら、もう一度振り下ろすなんてことを出来なくしてやるよ」
昔ながらのヤンキー先輩Bに回し蹴りをいれる。
クリーンヒットしたおかげで、その先輩はその場に倒れ込んだ。
生きてるよな……?
「もらったぁぁ!!」
「見えてないと思ったら大間違いだぞ?」
後ろに回り込んでいた昔ながらのヤンキー先輩Cの鳩尾に力を込めた拳をぶつける。
昔ながらのヤンキー先輩Cは言葉を発することなく撃沈した。
昔ながらのヤンキー先輩たちを一掃した後、腰が抜けてしまったのかその場にへたり込んでいた女の子に声をかけた。
「大丈夫か? 怪我があれば保健室まで送るけど」
「えっと……ボクは大丈夫です。 先輩は大丈夫ですか?」
「全く問題ない」
ボクが一人称の女の子って本当に存在するのか……。
未確認生物を確認してしまった気分だ。
「あの……、お名前は?」
「ん?」
昔ながらのヤンキー先輩たちの名前だろうか?
確かに名前を知っておけば先生に訴えることが出来るだろうな。
でも、こいつらの名前を知らないどころか今日始めて見たんだが……。
「あなたの名前と、出来ればクラスも教えていただけませんか?」
「俺のか?」
「はい」
「2-Aの岡崎だ」
「岡崎先輩、助けて下さってありがとうございました。 ちゃんと御恩は返します!!」
え!?
なんかこの子、無駄に重く受け止めてないか!?
「いや、別に感謝されるようなことはしてねぇーよ」
「いえ!! どんなに感謝しても足りないくらいです!!」
「と、とにかく気にしなくていいぞ!!」
「あっ!! ちょっ、待って下さい!!」
もう説得しても意味がなさそうだったから逃げてきちゃったけど、教室にまで押し掛けてくるとかないよな……?
その時は、本当にそうなるとは夢にも思っていなかった……。

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