おいでませ、助太刀部!! 野宮詩織 /作

第6章 「タネが分かったらつまらないじゃないか」(part6)
「え…? 合格って何に?」
川原先輩が戸惑いながら尋ねた。
こんな時にも戸惑わずに対応できるのは、伊野や桜くらいなものだろう。
「ボクの友達になる資格有りっていう意味ですよ~ん」
軽い調子のまま出雲が言った。
川原先輩みたいなタイプの人だと、内容が超上から目線な辺りに少しイラッとくるかもしれないな……。
違うタイプの人でも多少はイラッとするだろうけどな。
「……アンタ、友達いないの?」
川原先輩が尋ねた。
「残念ながら今のところ、いませんよ~ん」
出雲が答える。 いい加減、まともな敬語を使ったらどうだろうか。
「……………しょうがないわね。 友達になってあげるわよ」
何を思ったのか川原先輩が友達になることを了承した。
やっぱり、この人は偽善者かもしれないな、うん。
* * * * * * * *
「という訳で、今回の依頼は完遂したよ」
「流石だねっ」
部室に戻ると補習から解放された深間がぐーたらしていた為、一応、相斗がことの顛末を報告した。
ちなみに、眸がいないのは係の仕事が今日は忙しいとかいう理由らしい。
「川原先輩って実はそこまで悪い人じゃなかったんだねっ。 正直、もっともーーーっと悪い人だと思ってたよっ」
さりげなく失礼なことを言っているが、俺も人のことを言えるたちじゃないし、突っ込まずにおこう。
「…それにしも、平和」
花薇が呟いた。 やっぱり、のんびり平和にしてられるのが一番だな。
依頼が無ければ、部室でダラダラしてられるし。
「そうだねっ。 依頼も今のところは5月まで来ないしねっ」
5月にくる依頼は林と橘のものだろう。 「勉強を教えてくれ」とかいう平和な依頼でありがたいと思った記憶がある。
今日が嵐の前の静けさだった、ということに気づくのは翌日のことだった。
第6章 「タネが分かったらつまらないじゃないか」
完!!

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