おいでませ、助太刀部!! 野宮詩織 /作

第2章 「え!? 本当に依頼とか来るのか!?」(part11)
「失礼しますわ」
翌日、部室の扉を勢いよく開けたのは笠井先輩だ。
「おっ! やっと来たねっ! 報告をどうぞっ!」
深間は元気よく笠井先輩に話しかけた。
報告を聞く前からドヤ顔なのが少し気になるが、この際、もうそんな小さいことは気にしないことにしよう。
けっして、匙を投げたわけではないぞ?
「付き合ってくださるそうですの! 本当にありがとうございました!!」
四月朔日が持ってきた情報のお陰で、両想いだと分かっていた俺らからすれば、至極当然なのだが、笠井先輩はとても嬉しそうだ。
遠足前日の小学生のテンションが物凄く上がっているらしい。
「おめでとうっ!! って言っても、私たちほとんど何もしてないんだけどねっ」
確かに、俺たちは最初の方だけ一緒に行動したが、それ以上は何もしていない。
つまり、何もしていないに等しい。
「いいのですわ! すべてをあなた方がやってくれたのでは意味がありませんもの。 だから、『手伝ってくれるだけ』でいいんですの」
「助太刀部の趣旨をよく捉えていてくれているみたいで嬉しいよっ!」
2人がさりげなく良いことを言っているが、その後ろでスタンガンを改造しているアホがいるお陰で台無しだ。
「とにかく、ありがとうございました!」
笠井先輩は、最後に一礼して上品な動作で扉を開けて、助太刀部の部室から立ち去った。
「岡崎っ! 意外と楽しかったでしょっ?」
「うーん。 まぁまぁだな」
けっして、つまらないなんてことは無かったが、楽しいとは思わなかった。
何もしてないしな。
「う~んっ。 残念だなぁっ……」
珍しく深間が落ち込み始めた。
こういう仕草とかを見ていると耳がたれてるウサギを飼いたくなってくる。
あれ、マイナスイオンを大量放出しているのではないかというほど、癒し効果があると思う。
「そういえば、前々から気になっていたんだが、この部活の顧問って誰なんだ?」
仮入部前から気になっていた疑問を相斗にぶつける。
「え? 翔が苦手なタイプの人だよ?」
「今の回答のお陰で、入部する気がかなり減った」
「えっ!? だめだよっ! 入ってっ!」
嘘は一言も言っていない。
深間が頼んでくるがそんなことは気にしない。
いや、無視はしないけども。
「嫌だ」
「え~っ!?」
他愛もない会話をしている間に、俺の苦手なタイプの人間が部室の前に立っていたせいで、その人に遭遇するのはまた次の話。
第2章 「え!? 本当に依頼とか来るのか!?」
完!!

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