おいでませ、助太刀部!!   野宮詩織 /作



第8章 「吾こそ翔の正妻なのじゃ!!」(part4)



もう、絶望的になりつつある俺の立場を考えて、周りは一度落ち着いて欲しいと思うが、発言権が無いため、そんなことは口が裂けても言えない。

『あんなことやそんなこと………だと………!?』
『岡崎、絞殺か刺殺か選べ』
『いや、待て! その前に爪くらい剥いでおこうぜ』

なんか段々と会話内容がグロく、なおかつ具体的になってきている気がする。 気のせいだと信じたい……!

「はいはい、静かに!!」

担任が再び教卓を叩きながら叫ぶと、わずかながらも教室が静かになった。
まぁ、男子の大多数が特待生とは思えない会話をしているため、効果はいまいちだが。

「道成、岡崎の後ろの席で妥協してくれ。 とりあえず、5月の半ばくらいにまた席替えするから、それまでの辛抱だ」

…………………ついに担任が匙を投げた。
どうしてだろうか。 匙と一緒に俺の命とかも飛んでいってしまった気がする。

「……止む負えん。 とりあえず、今はその案を飲もう」

月海はやっと空気を読んでくれる気になったらしく、俺の後ろの席に座った。
ちなみに、月海が座っている俺の後ろに本来席は無いため、四月朔日の隣の席から机といすを持ってきて暫定的に作られた場所だったりする。

* * * * * * * *

~4時限目~

「じゃあ、この問題を鈴木、こっちの問題は柴崎。 黒板に答えを書け」

4時限目は現国の為、あてられる確率は非常に低い。
鈴木と柴崎はドンマイだ。 特に柴崎は今日1日、ついていないらしいな。
現に、今、柴崎の解いている問題の方が鈴木の解いている問題よりも難しい。
残念なことに俺もその問題は解けていない。 当たらなくて良かった………!!

『翔たん、この程度の問題を解けなくてどうするですか! その問題はですね、此処を(以下略)』

窓の外から幻聴が聞こえてくるなんて、俺、疲れてるんだな…。 榊原が何のリアクションもしていないっていうことは、窓の外に見える三つ編み眼鏡の女の子は幻覚か幽霊だろう。 そもそも、ここは3階だしな。

「せんせー、俺、その問題は解けてませーん!」
「じゃあ、代わりに……桜、出来てるか?」

柴崎が白旗をあげたため、先生が桜を指名した。

「出来てます」
「それなら黒板に書いてくれ」

桜が黒板に答えを書いていく。 さすが、学年1位。

『おぉー、流石、歩たんですね。 合ってますですよ』

………まだ幻聴が聞こえる。 俺に眼鏡っ娘萌えとかですます口調っ娘萌えとかいう設定は無かったはずなんだが……。

「2人共、正解だ! 特に桜の方は難しいのによく解けたな!」

俺が幻聴にとらわれている間に答え合わせが終わっていたらしく、先生が桜を褒め称えていた。

……………疲れてるみたいだし、残りの時間は寝ちゃおうかな。

『翔たんもアレぐらい解けるようにならなくちゃダメなのですよ? あっ、授業中に寝るなんて愚の骨頂ですよ!!』



なんで俺は幻聴に説教をされてるんだ……?