おいでませ、助太刀部!! 野宮詩織 /作

【part6】
「着ねぇよ」
答えない、というのは流石に悪い気がするので、自分の意思をしっかり伝える。
「俺とお揃いなのに?」
八雲が着用している黒と白を貴重としたロングスカートタイプのメイド服の裾をつまんで、それっぽく頭を下げてみせる。
今の動作で、相斗のイライラが悪化したようだが、そんなに会話を中断させられたのが嫌だったのか…?
「隙有りよぅッ!!」
明らかにイライラしている相斗の心配をしていると、中子が俺の背後をとり、そのまま羽交い締めにしてきた。
「翔、観念して服を脱いでね!」
兄貴がそう言って、中子に身動きを制限されている俺のズボンのベルトを奪い去る。
いやに慣れた手つきだったような気がしたが、それは気のせいだと信じたい。
「そうじゃっ! 吾とて恥じらいを捨て、斯様(かよう)な格好をしておるのじゃぞ?」
中子に続いて着替え終わったらしい月海が、さりげなく俺のネクタイ外しながら言う。
月海はミニスカタイプの婦警官の衣装を着ているのだが、これではどこからどう見たって警官ではなく、捕まる側の立場だ。
「いやああああ!! 何でココはセクハラが普通に横行してるんだ!?」
正直に思ったままを叫ぶ。
足をばたつかせてみるものの、この3人に俺の独力で勝てるはずがない。
「うふふ、どうしてかしらねぇん」
中子が含み笑いをしながら、俺のズボンに手をかける。
「分かった分かった!! 着替えるから、脱がせるな!」
現在進行形で俺の衣服を剥ぎ取っていく中子達に懇願する。
「うん。 でも、メイド服を着るためには、一度制服を脱がなくちゃいけないし」
「だから、私達が脱がせてあげるわぁん」
「最後の一枚まで!」
3人が見事としか言いようがない流れで、制服を脱がしていく。
「なんで最後の一枚まで脱がす気でいるんだ!?」
テンションがおかしい3人に聞いてみる。
どうせ、まともな返事は返ってこないんだろうけどな……。
「大丈夫! 最後の一枚はYシャツだから。 ちなみに、最後から二番目は靴下」
兄貴がグッと親指をたてて、言い放つ。
最後の一枚がYシャツ、最後から二番目が靴下……?
……今、俺に残っている衣服は靴下、Yシャツ、トランクスの3点のみ。
ということは、つまり――――
「さぁ、翔、脱ぐのじゃ!!」
「なんでだ!? これは脱ぐ必要ないだろ!!」
* * * * * * * *
全力で死守した結果、ギリギリ脱がされずに済んだが、これはマシになったというべきなのだろうか……。
「翔、いつもに増して可愛いよ!!」
兄貴が俺の背後から、ガバッと抱きついてきた。
その拍子に、八雲のそれより明らかに短いスカートがひらりと捲れる。
「どうして、俺のはスカートの丈が短いんだ……!!」

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