おいでませ、助太刀部!!   野宮詩織 /作



第8章 「吾こそ翔の正妻なのじゃ!!」(part1)



「先生~、帰国子女の子はまだですか?」
「早くしろよ、女子? それとも、男子?」

朝のHRの時間、担任が入ってきた瞬間に「帰国子女はまだか」というようなことをクラスの奴らが言った。
異口同音とはまさにこのことだろう。

「焦らなくても紹介するから静かにしろ! ちなみに、またまた女子だ」

担任が教卓をバンッと叩いて言った。
すぐさま、さっきまでの喧騒が嘘であったかのように教室が静まり返った。
まぁ、女子から「また女かよ」とかいう声が聞こえるが、それは聞かなかったことにしよう。

「道成さん、入ってきていいよー」

担任が帰国子女の子の名前を呼ぶと、割とすぐに扉が開いた。
すると、中子の時のように教室がざわついた。 正しく言うと、ざわついたどころではない。

その帰国子女の容姿について一言でまとめると、「かわいい」ないしは「キレイ」だろう。

金髪のふわふわしたロングヘアにうすい青色の目。 背は女子にしては少し高めで、中子には劣るが巨乳だし、スタイルの方も抜群だ。
うん、どこからどう見ても月海だ…………!!

「道成さん、簡単にでいいから自己紹介して」

担任が黒板に彼女の名前、「道成月海」と書きながら言った。
担任がそういうと、月海は一歩だけ前に出て口を開いた。

「うむ。 吾は道成月海じゃ」

月海は本当に簡単に自己紹介をした。
あぁ、どうしよう。 このしゃべりかたといい、見た目といい、名前といい、絶対に月海だ……!!
俺、終わった………!

「じゃあ、道成の席は……………」

担任が空席の場所を指差そうとすると、再び月海が口を開いた。

「中橋先生、吾は岡崎翔の隣が良いのじゃが」
「いや、でも、岡崎の隣には榊原さんがいるんだけど……?」

月海ぃぃぃぃいい!!
何でいきなりとんでもない行動してるんだぁぁぁあ!!!!?
周りを見てみろ! 俺に対する殺意のこもった大量の目が見えないのか!?

「しかし、吾は翔の正妻なのじゃ! 良夫(おっと)の傍にいるのが良妻(つま)の務めなのじゃ!!」

月海がキレイな金髪をなびかせながら熱弁している。
いい加減に気付け!!
お前が熱弁すればするほどに周りのめが冷たく、さらに刺すような視線になっていくことに……………!!

『っていうか、嫁!? 岡崎、中子とか1年の男の娘メイドのことも誑かしておいて、本妻までこんな可愛い子なのか!?』
『ちょっと見た目がいいからってずるいぞ!!』
『もう、殺っちゃおうぜ!』

周りの男子たちからそんな声が聞こえた。



あっ、俺、終わったな……………。