おいでませ、助太刀部!! 野宮詩織 /作

第3章 「もこ○はけい○の嫁なのよ!!」(part1)
「ただいま~。 この間は依頼お疲れ~!!」
助太刀部の顧問である稲田恋(いなだ れん)は部室に入ってきてすぐにソファに座った。
「稲田ちゃん、おかえりっ!!」
「おかえり」
「おかえりなさ~い」
「おかえりください」
明らかに歓迎ムードじゃない人が1人いますが、そんなことは無視して稲田先生は話し始めた。
「いや~、まさか出張が入ると思ってなかったのよ~。 ごめんね~」
「大丈夫だよっ!! 依頼もちゃんと完遂したしねっ!!」
「そう? それは良かったわ。 あっ、そうだ!! お土産あるわよ~」
「本当っ!?」
お土産につられる秋牙さんはまだまだ子供ですね。
見た目も子供ですし、年相応な点は何もないですし。
「わ~い!! お菓子だ~っ!!」
「この飴、食べてもいい?」
「僕はそのチョコがいいなぁ」
「俺は先生に帰ってもらいたいなぁ」
翔くんだけ明らかに考えていることが違いますが、別にこの先生が何かやらかしたわけじゃないのに不思議ですね。
なにかトラウマとか苦手意識があるんでしょうか…?
「あら? 岡崎くんは依頼に来たのかしら?」
やっと存在に気づいてもらえた翔くん。
この感じだとさっきまでの言葉も聞いていなかったでしょうね。
「違いますよ。 翔は今、仮入部中なんです」
相斗がいつものヘラヘラした笑顔を崩さずに言った。
自分が拉致ってきたことさえも感じさせない笑顔でしたよ。
「そうなの?」
「残念ながら」
翔くんの回答が気に入らなかったのか、稲田先生は口をとがらせて不満そうな表情をしていた。
「なんでそんな嫌そうな顔してるのよ~?」
「先生がいるからです」
「え~?」
稲田先生はさらに拗ねたような表情になる。
年を考えてください、年を。
27歳がそんな表情をしても可愛くも何ともありませんよ?
「まぁ、よろしくね~」
そんな軽い調子で稲田先生は翔くんに挨拶した。
翔くんの方は不機嫌そうですが。
「それにしてもうわさ通りの子ねぇ~」
「いや、本当はもう少し丸い奴なんですけどね」
稲田先生と相斗君の会話はどう考えたって翔くんについて話だろうけれど、当の本人は気付いていない様子。
というか、一体、うわさではどんなキャラなんでしょうかね。
「そういえば、1年生で入部希望者が2人いたんだけどさ~、どうするの~?」
「1人は知ってるんだけど、もう1人は誰っ?」
「秋牙ちゃんが知っている子は誰なのかしら~?」
「緑香ちゃんだよっ!!」
緑香さんは何を思って入りたいと思ったのか凄い気になります。
ストレス解消目的の可能性が濃厚ですが。
「もうの方はね~、眸夢魅(ひとみ ゆみ)っていう子なんだけど知ってる~?」
「私のところにはまだ連絡来てないよっ?」
「まぁ、今日書類渡したから、まだ書き終わってないだけだと思うわ」
「その子、どんな人なんですか?」
冥府さんが珍しく、能動的に口を開いた。
竹の花レベルにレアかもしれませんよ。
流石にそれは嘘ですが、けっこう珍しいことですよ。
「う~んとね、ピンクっぽい栗色のショートヘアでメイド服着てて、優しくてなんかすごいいい子よ~。 メイドとか咲○さん以外萌えないと思ってたけど間違いだったわね~」
間違っているのはそこじゃないとか言わないでください。
ちなみに、この学校は結構なマンモス校なので、制服改造は若干大目に見てもらえますがさすがにメイド服は注意の対象に入っているはずですよ。
「…? 翔? どうかしたの?」
「何でもねぇーよ……」
明らかに無理をしている様子な翔くんに相斗くんが声をかけたが、原因について教える気はないようだ。
震えは隠せていませんけどね。
「っていうか、花薇はこの部に入るのか?」
「うんっ!! 仮入部してからだけどねっ」
翔くんの臨死体験の回数が増えたのは、また別のお話。

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