おいでませ、助太刀部!! 野宮詩織 /作

第9章 「嘘を紡いだ唇を」(part14)
「深間、この人選に納得いくように説明してくれ」
深間に尋ねる。
中子達といたら、身体がいくつあっても足りない……!!
「中子ちゃんはリーダーシップが強いからだよっ」
まぁ、確かに統率力はあるな。
「道成ちゃんは機動力が高いからっ」
……それも理屈にかなっている。
「沫くんはパソコンが得意みたいだから、情報収集に役立つよっ」
…………理由がまともで断りにくい!!
ここで否定したら、ただのわがままになってしまう。
「翔たん、大人しく沫達と組むですよ」
うなだれている俺の肩を沫が軽くポンッと叩く。
そんな労う(ねぎらう)ような態度なのに、顔に浮かんでいる笑顔が腹立たしい。
もう本当に、殴りたいと思う位に。
「とりあえず、妹について、何かしらのヒントをもらえるかしらぁん」
中子が鎖月に問う。
とりあえず、中子には前かがみになるのを止めていただきたい。
理由は単純明快、胸が見えそうだからだ。
「俺の妹です」
「それは分かってるわよぅ」
意外や意外、俺っ娘だったらしい鎖月が前提条件を言う。
そもそも、他人の妹を探したいのだとすれば、最初にその旨を伝えるはずだしな。
ヤバい、中子の胸がもう少しで見えそうだ……!!
「何をしげしげと見てるですか……!?」
待つが背景に般若を出さんばかりの気迫で、尋ねてくる。
間違った答えを選べば、何が待ち受けているか分かったものじゃない。
落ち着いて、俺に与えられた選択肢を整理してみよう。
1.素直に真実に伝える。
「中子の胸を見てました!!」
「浮気ですか!? お仕置きしちゃいますですよ!」
ダメだ、恐らく、この後、仮眠室に引きずり込まれる。
コレは俺の尊厳やプライドも危なければ、絵面的にも危ない。
2.言い訳をする。
「これは……そのー、アレだ!!」
「言い訳をする翔たんにはお仕置きです」
コレもダメだ。
だって、完全にデジャブじゃねぇーか……!!
3.とりあえず謝る。
「すみませんでした!」
「【自主規制】させてくれたら許してあげるです」
……多分、この選択肢が一番、ダメだ。
何を言っても、俺にはグッドエンドは待っていない……!!
こうなったら、新たな選択肢を生み出すしかない!
「沫、今日はカッコいいな」
苦し紛れに褒めてみる。
男を褒める機会なんて、滅多になかったため、勝手がよく分からなかったが大丈夫だよな……?
「そ、そうですか?」
おっ、効いてる!?
この状態の時はカッコいいんで良いんだな。
松には可愛いって言えば、奇行がかなり緩和されるし……。
まぁ、お世辞抜きでも松は十二分に可愛いけどな。

小説大会受賞作品
スポンサード リンク