おいでませ、助太刀部!!   野宮詩織 /作



第6章 「タネが分かったらつまらないじゃないか」(part4)



「ん? 後ろの子は?」

川原先輩が質問した。

「伊野冥府です」

伊野が自己紹介をした。
前に川原先輩が部室に来た時は空気と一体化してるんじゃないかというレベルにまで影が薄かったから、助太刀部の部員だということに気付いていないのだろう。

「ふ~ん」

自分から聞いたのに川原先輩は興味なさそうなリアクションをした。
今のところ、偽善もなにもあったもんじゃないな。

「伊野は桜を探してたんで、ここに連れてきたんですけど…」

四月朔日がいつもの毒舌というか性格の悪さを隠して、残念そうな表情をした。
正直言って、今更取り繕ってどうにかなるものじゃないと思う。

「そうなの? それなら、探すの手伝おうか?」

えぇ!?
誰!? この優しげなオーラをだしている人は一体誰ですか!?
本当に川原先輩なのか!?

「…あれ、誰?」
「あの人、池に落ちたんじゃないかい? キレイなジャ○アン的な感じになってるよ?」

花薇と相斗も似たようなことを思ったらしく、小声で疑問を口にした。
劇的ビフォーアフターにもほどがあるだろ。

「手伝ってくれるんですか?」

四月朔日がビームが出そうなくらい目を輝かせて川原先輩に尋ねた。
その後ろの方で、真先輩が笑いを堪えてるのは見なかったことにしよう。

「もちろん! 困っている人を捨て置くなんて出来ないわ!」

ダウト!! この間の性格から考えたら、捨てられた子犬を崖から突き落とすくらい軽々やりそうだったぞ!?

「…四月朔日先輩、こうしてればモテるのに」

花薇が妙にリアルなことを言った。
本当にその通りだと思う。

「裏表が激しくって面白い人ですね」
「よく本性が分かったな」
「ボク、嘘を見抜くのは得意なんですよん」

出雲も四月朔日と似たようなものが得意なのか。
意外………でもないな。
最初から変わった奴だなぁ。とは思ってたし。

「巡さんっ! 浮気ですか!?」

突然、そんな声が真先輩の横辺りから聞こえてきた。
そこには、金髪のチャラチャラした奴がいた。
……確か奈良先輩だった気がする。

「何よ。 浮気も何もアンタなんかと付き合ってないわよ」

今回は川原先輩の主張が正しい気がする。
というか、四月朔日も狙われてたのか………。

「そんな…!!」
「しつこいわね」
「毎日、巡さんが家に帰るまで見守ってるのに…!!」

それは俗に言うストーカーだ。

「なっ!? そんなことしてたの!?」
「2年間、欠かしたことはありません!」

しかも、常習犯らしい。
このまま行くと警察に御厄介になる日は近いだろう。
川原先輩、意外と苦労してたんだな…。



まわりの奴らも似たようなことを思ったらしく、川原先輩に向けての優しい視線を送っていた。