おいでませ、助太刀部!! 野宮詩織 /作

第8章 「吾こそ翔の正妻なのじゃ!!」(part10)
「そんなに巫女服が好きならば吾が着てやろうぞ!」
……部室にまで押しかけてきて言うことはそれなのか。
「安心しろ。 俺は巫女服よりかはチャイナドレスの方が好きだ。 あ、いや、制服のままでいいです!!」
チャイナドレス、という単語が出た瞬間に部室のロッカーをあさり始めた月海を止める。
一言も嘘は言ってない。
普通に制服が一番いい。 女子高生の制服姿を週休2日で見れるのはたった3年間だけな訳だし。 まぁ、教師とかになれば話は別だが。
「遠慮するでない! 汝(なれ)が望むのであれば…み、水着やしししし下着姿でも、よ、良いぞ? ま、まぁ、2人きりの状態でなくば出来ぬがの……」
月海が顔を赤らめて言った。
仕草は非常に可愛らしいが、言っていることは全然可愛くない。
「こ、子供は見ちゃいけないよぉ?」
「えっ!? 私、桜ノ宮ちゃんより年上だよっ!?」
月海の発言に危険を感じた一条院が深間の目を手で覆った。
視界が遮られたのが嫌だったのか、深間がじたばたと暴れている。 本当に一条院の方が年下なんだよな………?
「わ、私と深間先輩は外に居ますから、どうぞごゆっくりぃ」
「ねぇ、何っ!? 一体、何が起こってるのっ?」
一条院が深間の視界を塞いだまま引きずり、扉の外に出る。
向こうとしては気を使っているつもりなのだろうが、こちらとしてはありがた迷惑もいいところだ…………!!
「おぉ、今の奴は気がきくのぅ……。 2人きりになったことじゃし、何が良いのじゃ…?」
「だから、制服のままでいいってば。 そして、帰れ」
「むぅ…。 汝は吾のことが嫌いなのか…?」
月海が潤んだ目で、さらに上目づかい気味に尋ねてくる。
……………………こういうのって反則じゃないか?
萌え死にそうなくらい、ストライクゾーンのド真ん中の表情だ。
「き、嫌いじゃないが………」
眸もそうだが、ちょっと助けただけでここまで懐かれるとどうしていいかいまいち分からないんだよなぁ……………。
「では、翔はコスプレというものが嫌いなのか…?」
「大好きだっ!!」
しまったぁぁぁぁぁぁぁ!! つい、本音が出てしまった………………!
どうすればいいんだ? これ、絶対、キレるだろ!?
「そ、そうか! ならば、汝がこれを着ればよいのじゃ! 吾も見てみたいのじゃっ!」
そういう月海の手にはメイド服(ミニスカートver.)が握られていた。
あれ? 今ってこういう流れはどこにも無かったよな……?
「い、嫌だ! しかも、それは女性物だ!」
「大丈夫じゃ! 汝なら何でも似合うからの!」
っていうか、このメイド服は一体どこから入手してきたんだ!?
間違いなく部室にあったものなんだろうけども!
『あっ、風葉先輩、今はダメですよぉ!!』
『え? どうしてだい?』
ガチャ(←相斗が扉が開く音)
「………………」
バタンッ(←相斗が無言で扉を閉めた音)
幼馴染に無言で見捨てられたのは結構悲しかったです。

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