おいでませ、助太刀部!!   野宮詩織 /作



第8章 「吾こそ翔の正妻なのじゃ!!」(part11)



「翔、さっきは見捨てちゃってごめんね」
「ごめんじゃ済まねぇーよ!!」

月海がメイド服を掴んで俺に押しつけるという惨劇は最終的に同情してくれたと思わしき相斗が再び扉を開けることでかろうじて事なきを得た。
事なきを得たかは微妙だが、無かったことにした方が幸せだろう。

「えー。 じゃあ、女の子紹介するから許して」
「もう女には懲り懲りだ!」

そりゃ、相斗みたいなハーレム状態とかには物凄い憧れるぞ?
だが、現実はそう上手くいくものじゃないんだ……!!
確かに、俺はハーレム状態に見えるかもしれないが、それを構成している奴らが奇人変人過ぎて素直に喜べないんだ………………!! 素直になっても喜べない!

「じゃあ、ワイン? 白と赤どっちがいい?」
「俺は未成年だ!! それと中学の頃から言ってるが、いい加減に飲酒も女遊びも止めろ!!」

相斗はどこで手に入れてるのかは不明だが、兄貴や俺に隠れて酒を飲んでいたりする。 勿論、酒というのは、ノンアルコールじゃないものだ。
この間、寮の部屋の冷蔵庫からワイン(恐らく白)を眸が発見して兄貴に引き渡していたということを相斗は知らないのだろうか。

「どっちも無理かな。 僕は翔とは違って模範的な人間にはなれないよ」
「模範的じゃなくてもいいから、本当に止めろ! 寿命縮むぞ?」
「当たり前だよ。 だって、寿命縮めるためにやってるんだもん」

相斗がさらっと恐ろしいことを言う。
これは飲酒と女遊びで留まっているだけラッキーと捉えるべきなのだろうか……………?

「むぅ……。 面白くないのじゃっ!!」

シリアスなことを話していたはずなのに、月海が突然、立ち上がり叫んだ。

「翔が猿ばかりかまって吾にかまってくれないのじゃっ!」
「さっき、十二分に構っただろ」

メイド服の件のあたりは特に頑張ったと思う。

「嫌なのじゃ! 本当は寮の部屋も同室がよかったのじゃーーーーーっ!!」

月海が拳を握りしめて叫ぶ。 こっちはこっちで、さらっととんでもないことを言ってのけている気がする。

「そうは言ってもなぁ……」

当たり前だが寮は男子寮と女子寮で分かれている。
眸は見た目(特に服装)が女だけで、生物学的には男だから同室が許されているが、月海はどちらも女だし、同室などは絶対に許されないだろう。
例え、朱里さんが許可したとしても、俺は認めないがな。

「むっ!! 「わーーーーーっ! いい加減学習しろ!」しかしじゃな……」

月海が禁則事項を思い切り破って扉を破壊した。
まぁ、俺が思いっきり叫んだから相斗たちには聞こえてないだろうが、辻褄合わせとかが大変だしなぁ……。

「あらぁん? いいものを見つけちゃったわぁん♪」

扉を開けようとしていたと思わしき中子が扉付近に落ちていたメモ帳を拾い上げて言った。

「あっ!! 泥棒!!」

中子の近くで水浸しになっている女生徒が叫んだ。



………………………………………誰?