おいでませ、助太刀部!!   野宮詩織 /作



第7章 「高校生には見えないんですけど!?」(part2)



「岡崎くーん!! おはよー!」

相斗たちと別れて廊下を歩いていると、クラスメイトの鈴木さんに声をかけられた。
朝から元気だなぁ。 朝に弱い俺としては羨ましい限りだ。

「ん、おはよう」

鈴木さんに返事を返す。

「ねぇ、知ってる? 今日、転入生が来るんだって」

情報提供の仕方が豆○バ以外の何物でもないが、偶然の産物だと信じてそこはスルーしよう。

「いや、知らなかった」

女子って何でか分からないけど、こういう情報早いよな。

「残念ながら女子なんだけどね………」

鈴木さんが残念そうに言う。
やっぱり、女子としてはカッコいい男子に来てもらいたいんだろうな。
逆に、男子からしたら、キレイな女子に来ていただきたい。
男なら誰しもが1度くらい考えたことがあるだろう。

「って、もう時間じゃん! 急がないと遅刻しちゃうよ!」

鈴木さんの警告に従い、教室まで走る。
扉を開けて、教卓のあたりを見てみるとまだ先生は来ていないらしい。
やはり、転入生が来るからだろうか?

そんなことを考えながら席に座り、暇つぶし用の本を読む。 へぇ、これ、ラグズって読むのか…。

「HR始めるから座れー。 というか黙れー」

担任の大声が響く。
いつもはなかなか静かにならないのだが、今日は周りの奴らにも転入生の噂を知っているためか、一瞬で教室は静まり返った。

「今日は転入生が来ている。 女子の皆さん、残念ながら女子です」

担任の言葉に教室からちらほらと笑い声が上がった。 ちらほらといっても、40人中7人くらいだが。

「おい、入れー」

担任が声をかけてすぐに、あらかじめ、廊下で待っていた転入生の少女が教室に足を踏み入れる。
その容姿の全貌があらわになった瞬間、教室には悲鳴と歓喜の声があがった。

「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」」」」(←男子の皆さん)

「「完敗した………」」(←女子の半数)

「「嫌あああああああああああ!!」」(←女子の残り半数)

「「ぬああああああああああああああああっ!?」」(←俺と桜)

「あっ」(←四月朔日)

四月朔日以外は見事なまでに大きなリアクションをとっている。
ちなみに伊野は女子の前者だ。

理由は簡単、九条学園のセーラー服を着た転入生の少女はとんでもなく綺麗だったからだ。
足は適度に細く、制服の上から見ただけでも分かるほどウエストも引き締まっていて、さらにはかなりの巨乳。
顔も高校生に見えないほど、大人っぽい。
そんな顔とスタイルのせいかもの凄く色っぽい。

女子半分の絶叫の理由はよく分からないが、好きな人を持ってかれるとか思ったのか…?

「静かに!! 静かにしてくれないと、転入生が自己紹介出来ないぞ!!」

担任の魔法の言葉により、教室が再び静まり返った。
そして、静まったのを確認して担任が黒板に文字を書いた。

『紅 中子(ホン・チュンツ)』

日本人ではまぁまずつけられない名前だ。 担任曰く、中国人だが、育ちは日本の為、会話には全く支障はないそうだ。

「紅中子よぅ。 よろしくねん」

紅は特徴のあるしゃべり方で自己紹介した。
その声も大人っぽい。
既にクラスのダメな男子の一部は目からハート型を模したビームを出している。 これ、本当に出すような奴いるんだ…。

「じゃあ、鈴木さんの後ろに空いてる席あるでしょ? あそこに座って」

担任に言われたとおりの席に紅が座る。
クラスの中で1番後ろにある席なのだが、ビームを出している方々は後ろを向いて、ビームを放ち続けている。
紅は慣れているのか、目のあった男子に片目を瞑ってウインクをした。

「せんせーい! 沢辺くんが突然気絶しました~」

紅のウインクによって気絶した沢辺は担任と保健委員の男子に支えられて、保健室へと連れて行かれた。
アイドルもびっくりのウインクだな……。



何やら波乱の予感がする、火曜日の朝だった。