おいでませ、助太刀部!!   野宮詩織 /作



第2章 「え!? 本当に依頼とか来るのか!?」(part4)



「ふーん。 それで、生徒会に入ってるあたしに頼もうという話になったんだな?」

桜は俺をボコした後に、何食わぬ顔で深間との会話に戻りやがった。
まさか、たったの2日で2回も臨死体験をさせられることになるとは考えてもいなかった。

「うんっ! 頼めるっ?」
「別に構わないが、会長ならあたしよりも四月朔日の方が仲いいぞ?」
「もちろん、四月朔日もこちらの味方に引きずり込むつもりだよっ!」

四月朔日がそう簡単に了承してくれるとは思えないが、普通に考えたら、それが一番妥当な手段だよな。

「なんだ? 俺に何か用か?」

声がした方を見ると、そこには四月朔日がいた。
生徒会庶務2人揃って、毎回、タイミングが良すぎるなぁ。

「しょうがないだろ。 この部活が問題ありって確定したから、生徒会から監査がつくことになったんだ。 で、この部活の担当は俺。」

また心を読まれた!?
なにこれ!? ものすごい怖い!!

「桜とどっちが怖い?」
「桜」
「あ?」

しまった! つい、本音が出てしまった! 殺されるっ!!

「翔はなんで余計なこと言っちゃうんだい?」

相斗が他人事のように言う。 実際に他人事なんだろうけどな。

「2人まとめて斬ってやろうか?」

桜が危険な笑みを浮かべながら危険なことを言った。

「はっ! お前に俺は殺せないだろう?」

……四月朔日は何を言ってるんだろうか?
桜がその気になれば軍艦の一隻やニ隻ぐらいあっさり沈められてしまうだろう。 というか、軍艦、この間、軍艦を沈めてたしな。

「…………そうだな」

桜は刀を鞘へと戻す。 って、えぇ!?
本当に何もしなかったぞ!?
ズルイ!! ひいきだ!!

「ねぇ、四月朔日っ! かくかくしかじかっていう状況なんだけど、私たちの手伝いをしてくれないっ?」

深間が依頼の内容を四月朔日に伝えた。

「人を助ける部活が人に助けを求めるっつーのは不思議な話だな」
「求めてるのは助けじゃないよっ。 手助けだよっ」
「へ理屈じゃねぇーか。 ……まぁ、この部活の監査になっってしまったことだし、今回だけは特別に無料(タダ)で手伝ってやるよ」
「わーいっ!! 笠井先輩っ! これで、会長の気持ちを探りやすくなったよっ!」

深間が勢いよく笠井先輩の方を向く。
笠井先輩は辺りにマイナスイオンを撒き散らさんばかりの癒し効果のある笑顔を浮かべた。

「ありがとうございます。 私も頑張りますわ」
「頑張ってっ!! なんだかんだ言って、最終的にケリをつけるのはあなたなんだからっ!!」

深間がさりげなくいいことを言った。
伊野は無表情を崩さずに記録をとり続けている。
相斗はスタンガンの電池を交換している。

最後だけすごい締まらないことをしているがスルーしよう。
うん。 気にしたら、負けだよな。

「じゃあ、四月朔日は会長の好きな人を明後日までにさりげなく聞き出しておいてっ!」

深間が部長らしく指揮をとる。
見た目が小学生でさえなければ、物凄く格好いいと思う。

「分かった」

四月朔日があっさりうなずいた。

「それで、歩ちゃんは副会長と会長の接触を安全に阻止してっ!」

「安全に」と言った辺り、俺のように副会長を襲われては困ると判断したのだろう。
一瞬、感心してしまったが普通は最初から安全な気がするのは気のせいだろうか……?

「で、笠井先輩は明日の放課後、またここに来て! 作戦を練るからっ!!」
「分かりましたわ」
「それじゃあ、今日は解散っ!!」

深間の号令と共に、各々部室から出ていく。
勿論、俺も早めに帰った。
別に早くこの場から離れて、現実逃避をしようとか思ったわけじゃないぞ!!



こうして、俺の仮入部一日目が無事ではなかったが終了した。