おいでませ、助太刀部!! 野宮詩織 /作

第8章 「吾こそ翔の正妻なのじゃ!!」(part16)
「遅れちゃってごめん」
相斗の可愛そうな悲鳴の直後、伊野が入口から入ってきた。
―――――――――――人間を引きずりながら。
「なんで、何食わぬ顔で人を引きずってるんだ!?」
桜の悪い影響か!?
「岡崎に渡して欲しいと言われた」
誰!? 俺を殺人犯にでも仕立て上げたい奴がいるのか?
俺、何か悪いことしたか!?
引きずられている人間の顔を見ると、既視感があった。
「あっ! 思い出した!!」
確か、さっき、月海が水浸しにした子だ!
この子、今日は踏んだり蹴ったりだなぁ……。 どちらかというと、(月海たちに)踏んだり蹴られたりな気がしなくもないが。
「あっ、第2新聞部の風文さんだっ。 取材日を早めてもらっちゃって、ごめんねっ」
「謝るのはそっちについてなんですか!?」
女生徒、改め、風文が驚きの声をあげる。 その意見には激しく同意をする。
というか、さりげなく深間に対する口調が敬語になっている。
「取材? 何、それ?」
何故か兄貴が扉越しに尋ねてきた。
相斗を襲っているはずの兄貴が質問をしてきたことよりも、扉の向こうまで会話が聞こえている事に驚きを隠せない。
「……誰?」
「俺は岡崎忍だよ」
風文が兄貴に尋ねると、兄貴は珍しくちゃんと答えた。
明日はきっと槍が降ってくるだろう。
まぁ、兄貴は部外者なわけだし、風文が兄貴のことを知らないのは当然だろう。 逆に、知っている方がおかしい。
「岡崎……? あんたの兄?」
「残念ながらその通りだ」
風文が俺を指差しながら尋ねてきたため、その質問に答える。
さりげなく、後輩にタメ口きかれた……。
もしかして、俺、なめられてるのか?
「ふーん……。 今度、記事にしようかしら」
「俺は部外者だし知らないでしょ? だから、記事に出来ないよ」
兄貴が冷静に答える。
なにか悪いものでも食べたのだろうか。
まさかとは思うが、おふくろの手料理か……!?
「部員はこれだけなのですか?」
風文が深間の方を向き、質問した。
「ううんっ。 他にも緑香ちゃんや風葉がいるよっ」
深間が首をブンブンと横に振りながら答えた。
「ほぉ、これはこれは。 流石は助太刀部。 面子がいいですね(見た目的な意味で)」
「私が選んだんだから、悪い子なんていないよっ(性格的な意味で)」
深間が真っ平らな胸を張って言った。
同じ行動をした時の月海の破壊力は半端じゃなかったというのに、こいつのは何とも思わない。
「それでは、質問をさせてもらってもよろしいでしょうか?」
「うんっ! 伊野ちゃんが答えるから安心してっ」
……あれだけ偉そうにしておいて、受け答えは伊野が担当するのか。

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