おいでませ、助太刀部!! 野宮詩織 /作

第8章 「吾こそ翔の正妻なのじゃ!!」(part13)
「次から次へと知らない人が現れるねっ。 岡崎兄弟の知り合いっ?」
深間が知らぬ間に中子の横に立っていた三つ編みメガネの女の子を指差して、俺たちに尋ねてきた。
「「こんな人、知らない」」
俺と兄貴が口を揃える。
本当は知り合いだが、こいつは何とかして他人のふりをして誤魔化したい。
さっきハモったあたりから察して、兄貴も知り合いだと思われたくないらしい。
「翔たんも忍たんも他人のふりをするなんて酷いですよ~」
「やっぱり岡崎兄弟の知り合いなのっ?」
「もちろんですよ」
深間が今度は三つ編みメガネの女の子――――――――松に尋ねていた。
ヤバい。 ここで肯定されたら、俺たちの努力が水泡と消えてしまう……!!
しかも、今回は中子や月海のように生徒として来ている訳ではないから、松はただの不審者だ……!!
「私は翔たんに忍たん、月海たんに中子たん、歩たんと玄たんの知り合いの草野松(くさの しょう)と申しますですよ」
松が自己紹介がてらに、さりげなく知り合いの紹介をした。
これで多少、怪しさは軽減されたか?
「岡崎、本当っ?」
「………………………本当だ」
渋々ながらも事実を認める。
流石にここは肯定的な返事をしなくてはマズイだろうからな。
「それにしても、あなたは何をしに来たのよぅ」
中子が松に尋ねる。
松は生徒でもなければ、兄貴のように保護者として誰かを迎えに来た訳でもなさそうだし……。
「それはこっちのセリフですよー。 なんで、月海たん達がここにいるですかー?」
松が口を尖らせて逆に聞き返した。
「吾は極力長い時間、夫の傍にいようと思ってのぅ……」
「私もできるだけ翔クンの近くにいたいのよぅ!」
月海と中子が答える。
どこから突っ込めばいいのかが、さっぱり分からない。
っていうか、伊野がいない今、この教室に常識人が1人もいない……!!
「そういう理由があったとしても、むやみやたらと一般の人と関わっては駄目なのですよ」
松が人差し指を立てて言った。
「安心せい。 吾は翔以外と関わるのは必要最低限に抑えておるぞ」
月海が胸を張って、堂々と言い放った。
決して、威張れるようなことじゃないと思う。
「私だって、翔クン以外との接触は必要以上最大限におさえてるわよぅ♪」
中子は何一つとして抑えられていないと思う。

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