おいでませ、助太刀部!!   野宮詩織 /作



第4章 「男の娘ですけど何か?」(part3)



~翔、回想続き~
4月13日 午後2時42分

「俺、今から部活行かなきゃいけないから!!」
「安心して下さい!! ボクもその部活に入りますから!!」

一体、何に対して安心しろというのだろうか?
むしろ、心配事が増えたぞ!?

「顧問の先生は誰ですか? 今から入部届けを取りにいきますから」

眸は物凄い早さで決断を下した。
その能力を他のところで生かせばとても役に立つだろうよ……。

「じゃあ、俺、部活に行くから!!」

桜には敵わないが、身体能力には割と自信がある。
スタートさえ成功すればこちらのものだ!!

「あっ!! 待って下さい!!」

遠くからそんな声が聞こえたがきっと幻聴だろう。
………すごい罪悪感に苛まされる幻聴だ。

~翔、回想終了~

「回想というよりは走馬灯だったんだが」
「いや~、ごめんね。 翔が逃げ出そうとすると条件反射で気絶させちゃうんだよね」
「お前の脊髄はそんなことまで判断できるのか!?」

脊髄反射っていうのは、人間は突然降りかかってきた災いに対して、脳で判断するのではなく脊髄が命令を出す。っていうものだった気がする。
俺の逃走は災いなのか…?

「というのは半分冗談で、本当は…」
「その先は言わなくていいぞ。 言いたくないんだろ?」

相斗は言いたくないことをいう時に一瞬、間を開ける癖がある。
というか、言わんとしていることは分かるしな。

「分かってくれてありがたいよ」
「10年以上前からの付き合いだからな。 なんとなく分かる」
「ねぇねぇっ、何の話!? 私も混ぜてっ!!」

深間が話に入りたいらしいが、入れるわけにはいかない。
相斗はそのことについて話したくないみたいだしな。

「内緒」

相斗が深間にそう言った。
深間もなんとなく察したらしくあっさり諦めた。

「あの可愛い子、この部に入るのっ?」

さりげなく話の流れまで変えてくれた。
見た目がロリでなければ付き合って欲しいくらい良い奴だ。
見た目がロリでなければな。
大事なことだから2回言ったんだぞ。

「…………可愛い?」
「羨ましいくらい可愛いよっ!! こう…スラッとしててバーンって感じでっ!!」

擬音語だらけでいまいち分からない。
「バーン」とか交通事故の音にしか聞こえないし。

「秋牙は背が高くて細身で胸が大きいって言いたいんだと思う」

伊野が補足してくれた。
伊野の立ち位置が最近、補足説明係になってきているのは気のせいだろうか?

「深間…。 落ち着いて聞くんだ。」
「何っ?」
「眸は男だ」
「えっ!?」

深間が驚いているが、それが普通のリアクションだよな…。

「何で男の子に胸があるのっ!?」

そっち!?
驚くところ、そっち!?
女装していることについてはスルーなのか!?

「パッドをいれればどうにかなると思う」

深間のアホな質問に伊野が真面目に答えた。
…この部活には奇人変人しかいないのか!?
………どんなにポジティブに考えても奇人変人しかいねぇーな。

「岡崎先輩!! 稲田先生が仮入部許可をくれました!!」

稲田先生ぇぇぇ!!
何で許可してるんだよ!!

「先生!! 何で許可したんですか!?」

ちゃんと、理由を問いただしてみる。
まっとうな理由は帰って来ないだろうけどな。

「え~? 萌えるからに決まってるじゃな~い」



案の定、まともな返事は帰って来なかった。