おいでませ、助太刀部!!   野宮詩織 /作



第9章 「嘘を紡いだ唇を」(prologue)



「吾は翔の正妻なのじゃっ!!」

面白くない。

「翔クンは私のものよぅ」

面白くない。

「翔たんは松のことを一番に考えてくれるですよね?」

面白くない。

「ボクは岡崎先輩のことを愛していますよ」

面白くない。

「…岡崎先輩、見た目だけはかっこいい」

面白くない。

「岡崎先輩はモテモテだねぇ」

面白くない。

「岡崎くんが入ってくれてからにぎやかになったわね~」

面白くない。

「岡崎さんは本当にネタになりますね」

面白くない。

「岡崎くんには本当に助けられましたわ」

面白くない。

「岡崎のお陰でくっついてくるのが増えちゃったじゃないの。 別に嫌じゃないけど」

面白くない。

「別に嫌いじゃないですよ~ん。 どっちかと言ったら気に入っています」

面白くない。


なんで、みんなして『僕』から翔を奪おうとするんだい?

君たちには他がいるだろう?

『僕』には、翔しかいないんだよ?

翔がいなくなったら、また一人ぼっちになっちゃうじゃないか。

お願いだから『僕』から翔を奪わないで……。

翔がいなくなったら『僕』は何をしでかすか分かったものじゃない。

もしも、『僕』が君や君の大切な人を殺そうとするようなことがあったら『僕』を殺してもいいよ。




――――――君を失うことに比べたら、『僕』が消えることなんて厭わないよ。