おいでませ、助太刀部!!   野宮詩織 /作



第6章 「タネが分かったらつまらないじゃないか」(part1)



「あれ? 秋牙さんは?」

相斗とともに部室に行くと、いつもなら早くからいる深間の姿が無かった。

「補習中」

伊野が読んでいる本から目を離さずに答えた。
ちなみに伊野が読んでいる本は芥川龍之介の「河童」という本だ。
一応言っておくが、某シューティングゲームのお値段以上のテーマ曲ではないぞ。

「まだ中間テストも新学期テストもやってないのに補習があるのかい?」
「小テストで珍解答を連発したらしいぞ」

監査として生徒会から派遣されている四月朔日が答えた。
深間とクラスが違うのに何でそんな事を知っていたのだろうか…?
まさかストーカー!? ないしは盗撮か!?

バシッ(←ファイルで叩く音)

「痛ッ!!」
「ストーカーも盗撮もしてないぞ。 どっちかというとされる側だからな」

またこいつ、心を読みやがった……!!
……それにしても自意識過剰じゃないだろうか。
男がストーカーされたり盗撮されることはあんまりないと思う。

ドスッ(←ファイルで叩く音)

「お前、本気で叩いてるだろ!? っていうか音がファイルじゃなくて鈍器なんだが!?」
「気のせいだ」
「絶対に気のせいじゃねぇーよ!! そろそろ意識の方が限界なんだが!?」

このままだと気絶する(物理的な意味で)か目覚める(被虐趣味的な意味で)かしてしまうだろう。
その2択なら迷わず前者を選ぶが。

「耐えろ」
「お前は鬼か!!」

本当に酷い奴だ。
悪逆非道という言葉が一番似合うんじゃないだろうか。
!? 命に関わるレベルの危険を感じる!!

ズドンッ(←ファイルで叩く音)

「今のは流石に当たったらアウトだったと思うぞ!?」

今のはまともに喰らったらヤバいという本能が働き、避けられた。
本能ってすごいな。

「…岡崎先輩、四月朔日先輩、お客さんが来たから静かに」

いつの間にか部室に来ていた花薇に注意された。
悪いのは全面的に四月朔日だと思う。

「…どうぞお掛け下さい。」

花薇が客(多分依頼者)に声をかける。
今回の依頼者はどんな人だろう…?
十中八九ロクな人間じゃないだろうけど。

「お言葉に甘えて失礼するよ」

声から察するに女子だろう。
声変わりしていない男子の可能性もあるが、まぁ、あんまり深く考えないようにしよう。

「お茶、どうぞ」

相斗が花薇と依頼者の分のお茶を出す。
すぐにお茶をすする音が聞こえた。

「…名前とクラスと依頼内容を言ってください」
「ボクは1-Cの出雲小百合君ですよ~」

喋り方からしてロクな奴じゃなさそうだ。
服装も普通ということもなさそうだな。

「お前、この間、轟が書いた新聞に載ってただろ」
「あれのせいでコレで驚いてくれる人が減っちゃって困ってるんですよん」
「それなら良い話がある」

四月朔日と依頼者がヒソヒソと小声で会話しているらしい。
何を話しているんだろうか?

「岡崎、出て来い」

四月朔日に呼び出された。
その呼び出しに応じて、依頼者が見える位置に出る。

「!? お化けっ!! お化けぇぇぇええ!!」

依頼者の出雲小百合の首が胴体から離れていた。
うぅーっ!! ムリ!! こういう類のムリ!!

「翔、落ち着いて!! 四月朔日と出雲さんも止めてあげて!!」

相斗がそう言って、俺の元に駆け寄ってきた。

「相斗ー、怖いよー」

もう、取り繕う余裕もない。
怖いよー!!

「…何が起こったの?」

花薇が「何だ、コイツ」的な目をしながら尋ねる。

「翔は妖怪とかがダメで、ホラー映画とか見ると幼児退行するんだよ」
「ムリー、かえるー、家にかえるー!!」



あの時のみんなの視線は一生忘れられないだろう。