おいでませ、助太刀部!!   野宮詩織 /作



第7章 「高校生には見えないんですけど!?」(part8)



「忍、頑張ったわねぇん」

中子が床に痙攣しながら倒れている兄貴に声をかけた。
ちなみに、兄貴は約3リットルくらい本当に飲んだ。 辛いものが苦手なのに無理した結果がコレだ。
よい子も悪い子も大きなお友達も真似しちゃだめだぞ。 命に関わるかもしれないからな。

「おい、起きろ。 後、7リットルくらい残ってるぞ」

四月朔日が兄貴をバシバシと叩く。 完全に本来の目的を見失って、虐めるのを楽しみ始めている。

「もうムr「じゃあ、帰れ」がんばる」
「これ以上、飲んだらマジでヤバいから止めろ!!」

四月朔日にそそのかされ、ギブアップするのを止めようとした兄貴を止める。 放置したら、明日辺り、俺の兄弟が1人減ってしまう………!!

「…忍、新しいタバスコよ!」
「花薇! 2つの意味で止めてくれ! マジで頼むから!!」

タバスコを受け取った兄貴が元気100倍になりそうなセリフを言いながらタバスコを段ボールごと投げようとしている花薇を止める。
流石に段ボールごと投げると、タバスコ云々の前に段ボール(とその中身)という鈍器に当たって御陀仏すること請け合いだ。

「翔が兄さんを助けようとしてくれるなんて、ついに相思相愛に「なってない」冷たいっ!! 南極の氷よりも冷たい!!」

勘違いされては堪らないから、訂正しておく。
勘違いされる心配がなくても訂正しただろうけどな。

「いいから早く飲め」
「そして、帰れ」

まだ諦めていない四月朔日と桜が兄貴にタバスコを飲むように催促した。

「兄さんもう少しがんばるね」
「もう諦めて帰れって言ってんだろうが!! ほら、向こうに相斗がいるぞ!!」

最終手段として、相斗を生け贄に差し出す。
小さいころから一緒にいたせいか、兄貴は相斗のことも弟と同等の扱いをしている。 最初の「brother」が複数形だったのは、相斗と俺、2人がいたからだ。

「翔、捨てないで!! 僕の命とかピ―――――――とか!!」

相斗が放送禁止用語を叫びながら、助けを求めてきた。
しかし、時すでに遅し。

「本当だ……。 相斗がいる………」

なぜなら、兄貴が動き出してしまっているからだ。

「嫌だ嫌だ!! こっち来ないで!! 僕、翔と違って忍さんと血が繋がってないです!!」

相斗がいつものヘラヘラした笑顔から、マジで焦っている表情になった。
兄貴は不審者扱いにも動じず、相斗をどこかへ拉致って行った。
……………………………ご愁傷様。 

「嫌だあああああああああああ!!」

今の相斗の断末魔は聞かなかったことにしよう。

「深間、とりあえずアホは消えたぞ」

兄貴に殺される寸前だった深間に四月朔日が声をかけた。
アホ兄貴と一緒に相斗も消えたが、不安を煽るだけだし言わなくていいよな。

「あの人、何で襲ってきたのっ?」

だいぶ落ち着いたらしい深間が四月朔日に尋ねた。 四月朔日に聞いても分からないと思うんだが……………。
まぁ、誤魔化すのが無難な選択だろう。

「それは俺と同い年になったら教えてやるよ」
「もう同い年だよっ!?」
「精神年齢の話だ。 俺は今、200歳くらいだ」

こいつは仙人か何かなのだろうか。

「そうなんだっ。 私も頑張って早く大人になるねっ!!」



四月朔日の言葉に騙される深間はまだまだ子供だな。