おいでませ、助太刀部!! 野宮詩織 /作

第5章 「大気圏突破も出来るのか?」 (part1)
※テーマ曲 二色蓮花蝶/岸田教団&The明星ロケッツ
「で、橘。 依頼内容は何だ?」
今、俺は休日だというのに部室にいる。
勿論、他の奴らも揃っている。
「端的に言うと、陸上部のエースの梓を凹まして欲しいんっス」
「具体的には?」
依頼人は橘理人。
同じクラスだからという理由で俺が対応している。
こういうのって普通部長の仕事じゃねーのか?
「梓は長距離の選手なんっスけど、短距離もかなり出来るんっスよ」
「それがどうかしたのか? 陸上部的にはいいことなんじゃねぇーのか?」
2種類もの種目で良い記録が出せる選手に対して凹ませろとはいったい何事なんだろうか?
「俺が怪我していることは知ってるっスか?」
「知ってるぞ。 だから今はコーチ的なことをしてるんだろ?」
「そうっス。 それで俺の担当は長距離と高跳びなんっス」
橘は話し続ける。
「それで、最近梓が短距離ばっかりやるもんっスから、長距離のタイムが落ちていってるんっス」
確かにエースのタイムが落ちっていっているというのは辛いだろう。
自分が育てている選手となればなおさらだ。
「短距離と長距離のどちらかだけでも負ければ悔しがって練習に打ち込んでくれるかと思って依頼しに来たんっス」
「言いたいことは分かった。 林のタイムはいくつくらいだ?」
強豪である陸上部のエースとなれば相当速いのだろう。
学年で一番どころか学校全体で一番速い可能性もある。
そうしたら誰と対戦させても負けてしまうだろうから、策を練るしかないな。
トラップでも仕掛けるか……。
「1500M走は大体4分ちょいくらいっスね」
速っ!!
分速375メートルくらいか……。
勝てる奴いないんじゃね?
「で、短距離は200Mで16秒くらいっスね」
「えっ!? 私の100Mのタイムより速いよっ!?」
深間が驚いたことにもうなずけるくらいに速い。
短距離でも長距離でも勝てる奴はいなさそうだな……。
まじでトラップしかけるしかないのか……。
「うぅっ…。 そんなのに勝てる人いないよ~っ」
深間が嘆いているところに四月朔日が口をはさんだ。
「短距離なら勝てる奴がいる。長距離ならいい勝負が出来る奴が1人ずついるぞ」
「まじで?」
3年生だろうか?
とりあえず、同学年にはいなかった気がするけどなぁ。
「タイムを聞く限りは短距離なら桜の方が速い」
……あいつそこまで速かったのか。
どうりで振り切られないどころか追いついてこれる訳だな。
桜歩、本当に恐ろしいな……。
「長距離の方は?」
眸の問いかけに四月朔日が答えた。
「こいつに決まってんだろ」
四月朔日はそう言って伊野を指さした。
………………………………まじで?

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