おいでませ、助太刀部!!   野宮詩織 /作



第8章 「吾こそ翔の正妻なのじゃ!!」(part2)



「榊原とやら」

月海が周りの殺気だった雰囲気をスルーして榊原に睨みつけながら話しかけた。

「何?」

榊原は怯むことなく月海を睨みかえした。
何で席一つでこんな戦争状態になっているんだろうか。

「そこを退け」

…………直球だな、おい。

「はぁ!?」

当たり前だが榊原は納得がいかないらしい。 今ので、「いいですよ」って答える人はいないと思う。

「汝(なれ)は適当な空席にでも座ればよかろう」

月海が仁王立ちの偉そうな態度で言った。
こいつ、本当に席を譲ってもらいたいと思っているのだろうか……?

「何言ってるの!? やっとの思いでこの(岡崎くんの隣の)席になれたんだよ!? そう簡単に譲れないよ!」

榊原が月海に反論する。
榊原の席は窓際の一番後ろだ。 確かに、居眠りしてもばれにくいし、風通しも良好という特等席だ。
そう簡単には譲りたくないよな。

「退くがよい! 吾は翔の傍が良いのじゃ!!!!!!!!!」

月海が榊原に怒鳴るまではいかないが大きな声で言った。
いい加減に月海は諦めるべきだろう。

「ダメよぅ、月海。 私だって、嫁である翔クンから離れた席で我慢してるんだからねぇん?」

止めて! 頼むから止めてくれ、月海と中子!!
マジで周りのオーラが殺人級!!
耳を澄まして聴いてみろ……………!

『岡崎、殺っちゃうぞ☆』
『カッター投擲の準備はバッチリだぁ!!!!』
『カッターと彫刻刀どっちがいいと思う?』
『もう両方投げちゃえヨー☆』

悪霊のような声が聞こえるだろ……?
みんなクラスメイトのことを殺す気満々だ。 これ、人としてどうなんだろうか…?

「とにかく、道成は四月朔日の隣だ!」

担任がフォローを入れていくれた。 マジでナイスタイミング……!!

「嫌じゃ嫌じゃ嫌じゃ!!!」

月海、いい加減空気読んでくれ!! 300円、あげるから………!!

「そうは言ってもな……」

担任が困ったような顔をする。

「ならば止むなし! 吾は翔と一緒の席に座ろうぞ」

どういうことだ!? 一緒の席ってどういうことだ!?

「どういう意味だ?」

担任が月海に尋ねる。
こういう時、担任がまともな奴で良かったと心の底から思う。

「そのままの意味じゃ。 わ、吾が……翔の…ひ、膝の上にすすす……座るのじゃっ!!」

月海が頬を赤らめながら言った。
それと同時に――――――――――――――――

「「「「「「「殺せーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!」」」」」」」

悪霊と化したクラスメイトがカッターを構えた。



あっ、俺、マジで終わった……………………!!