おいでませ、助太刀部!!   野宮詩織 /作



第6章 「タネが分かったらつまらないじゃないか」(part3)



「川原先輩はどうだ?」

四月朔日が提案してきた。
皆さん、川原先輩の存在を覚えていますか?
ちなみに、俺はあんまり覚えてない。

「あの人は性格が悪すぎると思う」

伊野が最もなことを言った。
態度も偉そうだったし、とにかく面倒くさそうな人だったしな。

「そうだが、常識無いし偽善者だから問題ないだろ」

あの人、偽善者なのか?
悪に徹してそうだけどなぁ。

「じゃあ、見に行ってみるか? 今の時間なら生徒会室にいるぞ」

俺、伊野、相斗は行ってもいいという意味を込めて、頷いた。
とはいっても、出雲が嫌だと言ったらそれまでだが。

「…出雲さん、行くだけ行ってみる?」

花薇が「ダメもとで」といった雰囲気を醸し出しながら出雲に問いかけた。

「行く価値は十分にありそうだし、行きますよ~ん」

* * * * * * * *

そんなこんなで生徒会室にやって来たのはいいが問題が発生した。

「こんな大人数で押しかけるには行かねぇーだろ」

生徒会室は生徒会役員が5人しかいない為、お世辞にも広いとは言えない部屋で活動をしているのだ。
とはいえ、流石私立というべきかそこまで狭くはない。

「俺と伊野で行く」

四月朔日が俺の問いに答えた。
まぁ、妥当な選択だが、何故に伊野を選んだんだろうか?

「私?」

伊野も首をかしげる。
関係無いが、俺と伊野の疑問のシンクロ率がかなり高い気がする。

「予期せぬ事態に陥りにくいからだ」

だよな。
他の選択肢にロクなのがいないからな。
この場にいたら、深間でも良かったかもしれない。

「…確かに岡崎先輩より遥かに良い人」
「お前には言われたくない」

花薇の言葉に対して反論しておく。
自分で言うのも何だが、凶器を持ち歩いている奴に比べたら俺の方がマシだと思う。

「お前らはドアの隙間から覗いてろ」
「『お前らには必死に部屋の中を覗こうとしている卑しい姿が似合っている』っていう意味かい?」
「違う」

ごめん、四月朔日。
俺も相斗と同じこと考えてた。

「岡崎、殺すぞ?」
「ごめんなさい……」

四月朔日の桜レベルの気迫に押され、条件反射で土下座してしまった。
俺の脊髄は土下座をすることにまで視野に入れているのか。
…………その原因を作ったのは全部お袋だがな。

「失礼します」

ノックをした後に伊野と四月朔日が部屋に入る。
伊野が扉を閉めるときに少し隙間を開けておいてくれたおかげで、部屋の中が見える。

「川原先輩」
「何?」

川原先輩が四月朔日の声に反応した。
四月朔日も見た目だけならかなり良いもんな。

「桜はどこにいますか?」

生徒会室には人が3人しかいなかった。
俺達と一緒にいた四月朔日を除いても1人――――桜が足りなかった。

「歩ちゃんなら陸上部のエースをボコボコにしてたわよ?」

陸上部のエースというと林か。
今日が一昨日の明後日に当たる日…。



有言実行とは、まさにこのことだろう。(第5章 part4参照)