現実逃避超空間

作者/ 風そら



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つれてこられたのは、暗い倉庫のようなところだった


「おい、いったいどうなってんだよ?」

地べたに座り込む直人の手を振りほどき、怒り混じりで問い詰める


「わからねぇ」
直人は下を向きながら答えた

なっ・・・


頭の血管が浮き出しているのが分かった

「んだと… お前さっき話はあとだとか言ってたじゃねぇか」


責任とって説明しろよ…


「マジでわからねぇし、俺だって知りたいさ

 ただ一つわかってんのはここが【SPACE】だってことだ」



「さっきの奴はなんなんだよ」

直人は顔を上げた

「まずは俺が強制ログアウトの後どうなったかを説明するべきだな」



「…」



「あの後俺は、自分の部屋、現実世界に戻ってたんだが、
 そのあと見たニュースがひでぇことになってた」


「ニュース…」


「『【SPACE】は乗っ取った、謎のテロリスト集団出現』
 
 今日午後7時ごろ、【SPACE】内で数人の男が銃を乱射する事件が起こりました

 本来、【SPACE】で起きるそういった事件はすべて、総合制御センターに転送され、強制ログアウト、IDから犯人を特定することができますが、今回の事例では制御センターが該当ヘルメットどころか、【SPACE】に入っていたすべてのヘルメットと通信ができず、野放し状態となりました。

 さらに、ログアウトした【SPACE】利用者が睡眠状態に入ると、再び【SPACE】に入るという異例の事態が起きています。

 その後、総合制御センターが謎のテロ集団に乗っ取られ、『【SPACE】は我々の支配下にある。中に入っている人質を殺されたくなければ、政権を我々に委ねろ』という放送が、ラジオで流されました。

 【SAPCE】内で殺人が起きたとしても、現実世界には何の影響もないという発表が出されていますが、現に、午後7時ごろから意識を失ったままの人々が多数確認されています。

 総合制御センター統括司令部部長、橋本佑介氏は、『意識を失っている方々は、【SPACE】内に取り残されている人質と考えられる。現在、制御センターは全力で事件の解決に尽くしている』と発表しました。

 しかしながら、今現在【SPACE】で何が起こっているのかは何も分かっておらず、捜査は依然進んでいないのが現状です。

…だとよ」


な…


俺は何も言えなかった