現実逃避超空間

作者/ 風そら



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「ど、どうなされたんですか…?」
若い方の男は言った。

「候補試しに出かけようと思ってたところなんだがな。

 一匹、邪魔くさい蠅がいてな」


伊藤は頭を前に向けた。

ルティアは唇をかみしめた。

くそっ……


「まぁ、放っておいても問題ない程度の弱さだが」

伊藤のその一言で、ルティアは我を忘れた。

「待てッ!!!」
表の道路に転がり出ると、ルティアは伊藤を見つめた。

「おーやおや、もしかして話聞いちゃってた?
 こりゃーお仕置きだなー」

若い男は指をパキパキと鳴らして顎を上げた。

「幕僚長は候補のほうへ、ここは俺らがやります」

男の言った『やる』は、『殺る』と変換していいのかルティアは迷ったが、結果は変わらない。

「……お前ら候補行け、俺がやる」
伊藤はそういうと、手に紫の炎を宿した。

「「了解」」
二人の男はそういって向こうへ走って行ってしまった。


「人質管理部のトップが相手とは光栄だな」
ルティアはそういうと右手に複雑な形をした剣を握りしめた。


「…実に興味深い武器だな」
「TSウィルス感染者に言われる程ではない」

伊藤はニッと笑うと両手を肩の位置まで持ち上げた。
両手から肩にかけて炎が昇っていく。


「知ってるのか?まぁ、当たり前だな。だが一応君にも聞いておくよ」
「問答無用だ」


その瞬間

ルティアは消えた