現実逃避超空間
作者/ 風そら

10
「おい、悠斗、起きろよ」
直人の声で目が覚めた
俺…寝てたのか?
「ん…!」
起き上がろうと地面につけた右手に体重をかけると痛みが走った
「撃ちすぎなんだよ、手ェ痛めるぞ?」
直人は愚痴りながらも手を差し出した
遠慮なく手をつかんで起き上がる が、
「残念」「んがぁ!?」
直人は手を放していた。
俺は再び地べたに座っていた。
それだけではない、おかげで尾てい骨も痛めた。
「お前…なぁ…」
「ケヘヘ、信用しすぎなんだよ」
あ、そ、
「もう、こねぇのかな」
床に転がっている、もう「人」とは呼べない物体を眺めながらつぶやいた
「あぁ、奴らもそう数は多くないし、失いたくないんだろうな」
直人はそういうことに関して勘が効く、というより頭が回る
「ところでお前、さっきの話の続きは?」
聞いたのはまだニュースのことだけだ。まだまだ話は終わってない。
「あぁ、あれか。そのニュース聞いた後、俺はひと眠りしようと思って布団に入ったんだがな、、、
目が覚めたら――」
「――体が縮んでしまっていた」
教科書通りに進めればこの後は「え藤新一が…」と続く
「ちげぇよ!バーロー、目ェ覚めたらここにいたんだよ」
「わりいわりい、それで?」
「おかしいと思ってログアウトしようと思ったらさっきと同じ状況になってさ、
最初は俺も成す術なくって感じだったんだけどな」
「気付いて銃出して撃った、ってことか…」
よくそこまで考えられるぜ
俺なんて今さっき気付かされたところだったんだぞ…
「そして彷徨ってるうちにお前が追われてんのを見つけ、命の恩人となったわけだ」
「それは違う「何が違う」」
お前……
「それとだな… 忘れちゃいけねぇのは俺たちは誰も殺してないってことだ」
「?どういうことだ?」
一瞬顔をしかめる
「ここは【SPACE】だからな、人は殺せない。ただ『気絶』させてるだけだ」
なるほど、テロリストたちによって外との通信ができなくなった今、殺すも眠らすも同じってことだ
…ってことは…!!!
「おい、そしたら俺ら眠れないんじゃ…」
「あぁ、完全に精神が【SPACE】から離れたら、意識はもう【SPACE】にも現実にも戻らない。
まぁ、多少の昼寝とかなら問題ないと思うけどな」
な…
「無責任だぞ…眠れんのか?眠れねぇのか??」
無意識に言葉に力が入る
別にそこまで睡眠にこだわっているわけではないが、
いつ死んでもおかしくないということだ
「知らねぇよそんなもん!仮眠なら大丈夫かもっつってんだよ!」
「その『かも』が無責任だっつってんだよ!どっちかはっきりしろよ!」
「じゃぁ死ぬ!!!」
沈黙が流れた
「寝たら死ぬ…それぐらいの気で言った方がいいだろ」
「……」
はっきりしろといったくせに、今こうして死を突きつけられると納得がいかない
「ま、後は自分で考えな。俺は寝る」
「は!?」
お前、さっきと話が違うぞ!
「なんだ?文句あるのか?」
文句って…
「お前さっき寝たら死ぬって言ってたじゃねぇか」
「あぁ、言った」
「死ぬってわかってて寝るのかよ」
「100%死ぬとは言ってないだろ、あくまでも精神が完全に離れたらの話だし。
生きてたら生きる、死んでたら死ぬ、それでいいんじゃねぇのか?」
俺の怒りゲージはMAXを超えた、いや、爆発した
「ふざけんなよテメェ!!命なんだと思ってんだよ!!!」
「死んだ方が楽かもしれねぇぞ?
お前、銃で殺されんのと寝て死ぬのどっちがいい?」
「何だと……」
「それにどうせ、外とは通信できねぇんだし、生きてたってしょーがねぇだろ?」
その一言で俺は冷めた
どうせ生きては帰れない
そういうことか
「……」
「ま、好きにしろよ、俺が死んだらよろしくな」
そういって直人は…寝た
勝手にしろ…俺は寝ない…
そうして夜は明けていった
***
「あぁあ、よく寝た」
翌日、直人はごく普通に起き上がり、背伸びをした。
死ななかった…か…
直人は俺のほうを向くとゲラゲラ笑いだした
「なんだその隈はwww マジで寝なかったんだな?w」
「お前が脅すからだろバーロー!」
ったくこのクソッタレは…
「取り敢えず二人とも生きててよかったな!
どうする?このまま退屈な人質生活を一生続けるか、それとも――」
次に発する言葉はもうわかっていた。
外部との通信を復活させる…それにはテロリストたちを抑えること…つまり…
「奴らと戦うか、か…」
とるべき道は一つしかない
「いくか?総合制御センターに…」
「あぁ…行こう…」

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