現実逃避超空間
作者/ 風そら

30
総合制御センター 第三通信室
「い、伊藤!?」
ヘッドホンをした外人系の男が叫んだ。
男の視線の先には、あのスーツを着たリーダー格の男が、ポケットに手を突っ込みながら歩いてくるところだった。
外人系の男の声で、周りでパソコンにくぎ付けになっていた十数人の男たちが一斉に視線を伊藤という男に向ける。
「お前、なんでここに…」
別の誰かが言った。
「いちゃ悪いか。っていうかてめぇら、一応俺よりは階級下だぞ」
伊藤はニッと笑うと答えた。
「人質管理部が交渉部に何の用だ」
階級は下、という言葉は無視し、また別の男が言った。
「実は直接総理大臣と話がしたくてね」
伊藤はスタスタと吹き抜けになっている階をさらに四分の一ほどに分けている階段をのぼりながら言った。
「んだと!?んなこと出来るわけねぇだろ!!」
誰かがたまらず立ち上がる。
瞬間、紫の炎がその男を取り巻いた。
「ヘッドホンを貸せ。総理につなぐんだ」
伊藤は手から紫の雷のようなものはバチバチ出すと、男の首筋を撫でた。
第三通信室はざわめきに包まれながらも、伊藤にヘッドホンを渡し、首相官邸につないだ。

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