現実逃避超空間
作者/ 風そら

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「っ!!」
細い商店街を歩いていたルティアは心臓が止まるのを感じた。
この声は…いや、しかし……
『僕は心配ないですよ。今はとりあえず安全です』
そんな嘘が通じるとでも思ってるのか。何処だ…ファレンっ
『だから…ルティアさんは逃げてくださいッ!!
あなたは命を狙われています!どこか遠くへ!!でnいっ!がはっ!!』
「ファレン!!」
思わず叫ぶ。
ルティアは走った。ただひたすらに。場所はどこだ、どこにいる。
早く見つけなければ…なければ…
『聞こえるかヴィレイトリム』
「!」
この声は…たしか渡辺…
『ご存じのとおり、お前の守るべき男は我々が確保している。
今から3分で小島百貨店に来い。でなければ…』
後半の放送は耳に入っていない。
小島百貨店小島百貨店小島百貨店ッ!!
ルティアが全力疾走しようとした。
「行かせねぇよ」
「!?」
突如前方の道が炎の壁によってさえぎられた。
声の方を振り向くとそこには
「…お前は確か悠斗とかいう…」
「覚えててくれてありがとう。つっても二、三日前の話だけどな」
「お前と話してる暇はないッ!」
とにかく今は急がねば…
が、
「行かせねぇっつってんだろ!!」
「!?」
ルティアは左腕を掴まれた。かなり強引に。
「お前に何がわかるッ!?離せ!!」
ルティアは我を忘れて腕をもぎ取る。だが、悠斗の手は離れなかった。
「何もわからねぇよ。
でもお前が今行ったら殺される。俺はお前が殺されるのが嫌だ」
「ふざけるなッ!!!!!」
ルティアは叫んだ。
「お前に命がどうこう言われる筋合いは一切な「ある!!!」
言葉が詰まった。
息を静かに飲み込む。
「お前が死んだら悲しむのは誰だ?
自分が死んだらそれで済むとでも思ってるのか!?
そのあとの世界をどうすんだ!!!
綺麗事並べて逃げようとすんなッ!!!!!!」
空気が
凍った
一気にまくしたてられルティアは身動きが取れない。
右肩に温い手が乗った。
「仲間だろ?ちっとは信じろよ」
そんなもの、いらん。
吐き捨てたはずのその言葉は喉を通らなかった。
悠斗はニヤリと笑った。
「心配すんなって。向こうもそろそろケリつくからよ」
そういうと悠斗は手にしていたロケット花火を二つに割った。

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