現実逃避超空間
作者/ 風そら

46
「……」
しばらく沈黙が続いた。
「おいおい、それで終わりかよ?」
目の前で伊藤がつまらなそうな顔をした。
「まだ…終わってねぇよ!!」
俺は右手に炎を宿すと勢い任せに伊藤を殴った。
『バッ』「!?」
俺の金の拳は伊藤の紫の手に収まっていた。
「お前がどんなに適合力が高かったとしても、スピードと強さがなければ俺には勝てない」
次の瞬間、伊藤は消えた。
「また会おう。萩原君」
もはや声はどこから聞こえるのかわからない。
「待てよッ!!
計画ってなんだよ!なんなんだよちきしょう!!!」
声はむなしくオレンジ色の空に響いた。
もう夕方になっていた。
もう他の地域では犠牲者が出ているのだろうか。
それともこの東京のように虚しく廃墟と化したのだろうか。
ただ、とるべき手は一つしかない。
俺は手の上に見慣れたノートパソコンを出現させた。

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