現実逃避超空間
作者/ 風そら

72
「……そろそろ小島百貨店ね」
美佳が通りの名前と記憶をたどりながら呟いた。
「行こう」
咲子が促すと、美佳はゆっくりと頷いた。
一瞬で細い路地を駆けぬけ、そして――
「おーっとストップストップ。そんなあわてんなよ」
「!!」
美佳は硬直した。
目の前の人物は紛れもなく、伊藤。
「だれ、こいつ」
咲子の表情は歪んだ。
「ボス。とにかく、敵」
「なるほど」
今は肩書き云々はどうでもよく、とりあえずファレンという名の少年を助けるにはここを突破するほか方法はない。
「あ?まさかPの分際でSぶった切る気か?
悪ぃが俺はお前を殺すことしか頭にないんだが。っていうかそれが任務だし」
伊藤は頭をぼりぼりと掻きながら美佳を指差した。
まぁ別に誰でもおなじだけど、と伊藤があくびをした瞬間、咲子の目が変わった。
「……殺す」
スッと水鉄砲――訂正、ハイドロキャノンを取り出すと、銃口を伊藤に向けた。
「ほぅ、試すか」
水道管が破裂するような音と共に、伊藤が宙を舞った。
辺りに水しぶきがあがる。
伊藤は右腕から紫炎を吹き上がらせると、隕石のようにそれを美佳に落とした。
「っ、たッ」
間一髪、右にそれをかわすと、すかさず咲子がそこに一発かました。
『チュバンッ』
見事命中。伊藤はパッと後ろにジャンプしてにやりと笑った。
「…まさか水でこの火を消せるとまでは思わなかったよ」
そういい終わるか否かのその時、一瞬にして炎の弾丸が美佳めがけて発射された。
「ッ!!」
二人の反応が若干遅れ、息を飲んだ刹那、金色の円盤が弾丸を受け止めた。
「「!!」」
紫炎が相殺され、辺りに静寂が走ると、彼は現れた。
「よーっす!遅れましたー」

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