現実逃避超空間

作者/ 風そら



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「人だな」
直人が双眼鏡を構えていった。
「でも二人ね」
「どうする?逃げる?」

直人が双眼鏡をおろし、俺に渡す。


「いや、待とう」
直人はそういうと、そのまま動かなくなった。



30秒としないうちに、二人の人影はやってきた。

「あれ~もしかしてビンゴ???」
若い男が駆け寄ってくる。

三人は距離をとった。


「そんなビビんなって、俺ら怪しいものじゃねぇよ」
黒髪のショートカットで学生らしきその男は手を上にあげてぶらぶらさせた。

「てめぇらか?ヴァーリーの精巧な幻影をぶっ倒したっていうのは」
声からして40そこそこのごつい男が言った。

ヒゲが立派で、青いノースリーブにごついベルト、ジーパンをしている。
武器らしきものは持っていないが、【SPACE】内ではなんでも出せると考えればそれほど問題ではない。


「あぁ?だったらなんだってーんだ」
直人が答える。

ニヤリと学生の男は笑った。



そして、




『ドシュッ!!!』






一発だけ銃声が聞こえた後、それをしゃがんでよけた直人が再び起きた。

「ふーん、アンタ、強いんだ」
学生の男は言った。直人は睨みつける。

「胸ポケットに銃が入ってたな。ド素人でも分かるぞ。しまいどころを考えるんだな」
「アンタに銃の云々を聞かされるつもりはねぇ」



沈黙が流れた。


やがて、ノースリーブの男が口を開いた。


「俺らはCSA人質管理部特別課の者だ。俺はザック・デイソン。こっちは…」
「甘味金時だ」

特別管理課……聞いたことがない


「ずいぶんすごい所からの使者ね」
美佳の手にはもうすでに大鎌が握られていた。

お、オレは…????


「殺る気か」
直人は言った。

「殺すつもりはない、ただ試しに来たんだ。そこのお前の戦闘能力を」
ザックは俺を顎で指した。

だが、よりにもよってなんで俺なんだ…?


「どういう事情かは知らねぇが、こっちはぶっ飛ばす」
美佳が跳ね、直人が拳銃を取り出した。

「キャンデー、お前そっち頼む」
「アンタ……真面目にぶっ飛ばすよ?」

甘味はそういいながらもう一つ銃を取り出すと、直人と美佳に向けた。


が、もう俺の視界には入っていない。


ザックは口を開いた。
「お前、武器はあるのか?」

一瞬戸惑ったが、答えは一つしかない。

「ない」
ザックは笑った。


「まぁ、候補の人間が銃やらなんやらに頼るのはよくねぇな。
 ならこっちも拳で行かせてもらうぜ」
「上等だ」

ようやく自分の力を発揮できる、そう思った時にはザックは突進していた。