現実逃避超空間

作者/ 風そら



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「ああぁああぁあぁぁああぁ!!!!」

「「!?」」
甘味とデイソンは目を丸くした







そんなこと



もう考えられない





がちがちになっている手を背中に回し、突き刺さっている『異物』に触れる。


「悠斗ーーーーーー!!!」


直人の声が聞こえる



思わず笑いが込み上げた





さっきまでお前が怪我人だったのにな


俺はドサリと地面に倒れた




もう終わりか……?





あたりはやけに静かだった






もう一度最後の力を振り絞って深々と刺さっているナイフを握りしめ





















「っがッ!」









抜いた

赤く染まったナイフを地面に落とす。
痛みはもう、ない。

後ろを振り向くとそこにはスーツを着た男がいた。

「誰だ、アンタ」

「さすが候補、血の流れが速いな」
男は「クククッ」と笑った。


「ばっ、幕僚長まさか…!?」
デイソンが汗を流した。

「まさか?何を予想外の出来事が起こったみてぇな言い方してんだよ」
男は呆れた顔をした。


「し、しかし統管からの指令が最優先事項のはずでは…?」
甘味が一歩二歩と後ろに遠ざかった。

「おいおいおい、俺たちは悪名高き人質管理部だぜ?
 そんな綺麗ごと並べてどうすんだよ?
 候補だろうがなんだろうが俺と張り合える奴なら何をしてでも戦う」
「てめぇ…」

「あ?」と男はこっちを振り返った。

「あぁ、言い忘れてたな。俺は人管幕僚長の伊藤だ、よろしく」

ひとかんて…略しすぎだろ

脳内で苦笑いの表情をすると伊藤が口を開いた。




「悪い、お前もうTSウィルス感染してるんだわ」