現実逃避超空間

作者/ 風そら



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あ、いや、はい!ありませんっ!!

思った言葉は出てこない
「el,aw n…」
「はい、おかげさまで」
代表して答えるのはもちろん直人  まるで俺が無能なみてぇじゃねぇか

「それはよかった。私は美佳、あなたたちは?」


―――美佳…?  どこかで聞いたことが…
                  それにこの顔も…

「俺は直人、こっちは悠斗だ」

「え?、ぁ、はぃ、ょろしk…」
「よろしく」

「あなたたち、裏世界に向かってるんだってね?」

「あ、あぁ… 制御センターに行こうと思って…」
やっとまともに声が出てきた

「制御センターに?あそこはテロリスト達に乗っ取られてるわよ?
 大体、あんなとこに何しに行くの?」

「テロリストどもをつぶす」
答えたのは直人だ

「え、あれを? 簡単にはいかないと思うけど…」
「なんで?」

「……」

ん?なんでこいつ黙るんだ?
「どうかした?」

「いえ… まぁ、話したほうがいいのかも…  あなたたち、TMウィルスって知ってる?」
「「いや」」

なんだ、バイオ○ザードみたいになってきたぞ

「TMウィルスっていうのは、藤原博士が開発したもので、【SPACE】に接続する時の人体の抵抗をなくすための薬なの」

藤原博士…


待てよ……   藤原… 藤原…

藤原美佳…    !!!!!!!!!!!


「わかった!!!!!!」
本能的に叫んだ

「どうしたうっせぇ、人の話最後まで聞け」

「あんた、藤原博士の娘だろ!?」
直人の言葉は耳に入らない

「へ?」
美佳がきょとんとする
「テレビで見たぞ!【SPACE】の初めての一般被験者!!」

「あぁ、そういえば…」
直人も腕組みしながら納得する

「あ、知ってた? まぁそうなんだけどね」
美佳も話が呑み込めたらしい


「それで?そのTMウィルスってのは?」
直人が話をもとに戻す
「あぁ、そのウィルスを体内に注入すると、【SPACE】に入る際の事故が大幅に防げるの」

「でも今までそんな事故聞いたことないぞ」
「事故が起きたら叩かれるにきまってるだろ。 起きないようにするんだよ、バカ」

バカは余計だ

「そういうこと。それで、博士はTMウィルスを売り込もうとしたわけ」
「だが、ウィルスって響きはあんま気持ちいぃもんじゃないな」

確かに。それで安全が防げても抵抗があるな


「それしか名前がなかったの ウィルスって言ったって善良な予防薬よ」
「それはわかってるけどさ」


「で?売り込もうとしてどうなったんだ?」
「売り込む前にある集団に見つかったの
 それで、藤原博士は殴られて気絶。 その間にウィルスが盗まれたの」

「「な!!」」

「幸い博士は体に問題はなかったけど、ウィルスは悪の組織の手に渡ってしまった」
「でも別に善良な予防薬なんだからいいじゃないか」
「ところがそうでもないの。
 TMウィルスは体内の細胞を脳の電波から一時的に隔離するものなの。
 この状態だと、【SPACE】に入ったときのみ、ってこと」

「体が動かなくなるってことだな」
「そっちの方が事故起きそうだけど・」

「でも、少し手を加えれば一生、体を麻痺させる危険なものになるわ。
 それを恐れて藤原博士は奴らと交渉した」

「「どんな???」」




「自分の命とTMウィルスの交換」