現実逃避超空間
作者/ 風そら

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「すまん、意味が分からない」
一通り読み終えたところで反射的に言葉が出てくる。
「つまり……」
「TSウィルスは10億人に一人しか感染できないが、
TPウィルスとは比べ物にならない力が手に入る。
その源がTエネルギーということだ。読解力が足りないな、少年」
美佳の開いた口を無視してルティアが説明した。
俺的にはよくわかったし、別に誰が説明してもよかったのだが、美佳はそうはいかなかったらしい。
美佳はいらだちの表情を見せた。
「反応炉はTエネルギーを超能力エネルギーに変換する。
つまりこれが反応炉なんじゃないのか?」
直人がもっともなことを言った。
なるほど、確かに意味が通る。
「反応炉は細胞がTウィルスに感染された状態で作り出される物質だ。
政府が持っている、というのは意味が通らない」
ルティアがなぜか直人ではなく俺を睨んだ。
まさかお前もテレパシーか
「それより、この伊藤ってやつ…」
美佳が苦悶の表情を浮かべる。
「知ってるのか?」
直人が言った。
「何回か見たことがあるわ。人質管理部の統合幕僚長」
「ずいぶn『――――――――――――――――――――――』
とっさに思いつくのが高校野球のサイレン、次に津波警報、そして時代は古くなり、空襲警報――
ルティアの声はそれによって妨げられた。
『人質の皆さん、正午となりました。
『ゲーム』、開始です―――――――――』
今回の放送は短かった。
だがそれの持つ意味は深く、重かった。
2095年10月27日正午――
『ゲーム』開始――――――――――

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