現実逃避超空間

作者/ 風そら



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「始まった…か…」

直人の声は至って冷静だった。
ここに来てから直人は変わった。

なんかこう……冷めた?っていうか…


『パシパシパシパシ』

音の発生源を見ると、再び美佳がパソコンに何かを打ち込み始めていた。

「今度は何してるんだ」

腕組みしながら尋ねる。


「これ」
美佳は答えるとともにパソコンの画面をこちらに向けた。

なにか表のようなものだった。

「人質管理部 初日 班分けスケジュール1

  Aグループ   1班   青森付近~南下
          2班     上同様
          3班     上同様
          4班   福島付近~北上
          5班     新潟付近
          6班      待機
          7班    裏世界監視
  
  Bグループ   1班   青森付近~南下
          2班     上同様
          3班    新潟付近~東
          4班     九州巡回
          5班     上同様
          6班     上同様
          7班     上同様

  Cグループ   1班   千葉付近~北上
          2班     上同様
          3班      上同様
          4班    東京付近巡回
          5班     上同様
          6班     上同様
          7班     上同様
  
  D~Fグループ 全班      待機      」


直人がよみあげる。


「殆どが東北に向かってるな」
俺はつぶやいた。
「疎開と同じ考えなんだろう」
「でも、東京巡回班と九州巡回班の数が同じってことは…」

美佳がある点に注目した。

なるほど。


この状況で九州に逃げようという人は確かにいるかもしれないが、
海を渡る等の手段が出されたのはつい三十分前。

車でだって行けるがあまりにも遠すぎる。


観光客を狙っているのか?
もしくはそこに強い奴がいるのか?


「どっちにしろ、中部近畿ががら空き。そっちに移動した方がいいのは確かだ」
直人が言った。

そして、後ろを振り向いて初めて気づいた。



「ルティアは…?」



沈黙が流れた