現実逃避超空間

作者/ 風そら



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「あーくそ」

俺は身体にこびり付いている汚れを炎で消しとると、後ろを振り返った。

「大して強くねーじゃん」

何もないその空間は、金の炎により消滅したことを意味していた。


「東北行けば強いやついるって書いてあったのにな…」
俺はボリボリと頭の後ろをかきながらもう一度来た方向に向かう。

辺りはもう暗くなり過ぎている。

ここでさっきは懐中電灯があったからそれが頼りになったけど



ここで戦闘を行えばまさに『闇戦』だ…



と、前方に人影が見えた。

ポッと指先に炎を燈し、ゆっくりと近づく。


息をひそめて手をかざしたそれは…




































「標識か……」

と、思い後ろを振り向いたその時
「!!?」

目の前にいたのはほかならぬ人間。

地面を蹴って距離をとる。と、いっても3mぐらい。



「誰だ、あんた…」
強い口調で迫る。
指先だけにとどまっていた火は一気に肩まで這いあがる。

「君こそ誰?」
声の主は女のようだった。



あ、そうか……


知っての通り俺は女嫌い。



しかし、ここで「じゃぁ」と言って帰れるタイミングではない。


「…悠斗」

こういうのをなんというのだろうか。

良い言い方をすれば「単純明快」
悪い良い方をすれば……
























あれ?言葉がでてこない。



そうこう言っているうちに女は口を開いた
「へー、ボクは咲子凛狐」





沈黙






さぁどうする


このまま帰るか?


何か言うか?


「へー」みたいな?



が、その時、咲子が右手にあるものを持っているのに気がついた。

「おい、それ…」
「あぁ、コレ…?」

と言って俺の額にグイと押し付けたそれは



































「水鉄砲…?」

子供か、と思い心の中で苦笑する。


「うん、そだよ。見てな」
咲子は銃口をふっと右に90度ずらすと引き金を引いた。

『ズバッシュッ』
『ガッシャンバリバラン』




え、ちょっと待て



一時停止




最初の効果音は?え?
発射音?

次は?ん?




右にゆっくりと顔を向けると、20mほど離れたビルの窓が粉々に砕けている。

いや、それだけではない。

暗くてよくは見えないがその窓枠でさえもグニャリと曲がっている。






「じゃぁ、ボク眠いから帰るね」



「ちょ、ちょっと待てよ」



俺は咲子を呼び止めた。




「何?」


「俺と…仲間になんねぇか?」