現実逃避超空間

作者/ 風そら



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「そういや、美佳は千里眼と何が出来んの?」
テコテコと先を歩いていく美佳に聞く。

「跳躍力が増加する。それと、足にかかる負担が減るわ」

あぁ、だから…

トッドと戦ったとき上から落ちてきたのはそういうことか。

負担っていうのは痛みとか筋肉痛とかか?
あ、筋肉痛も痛みだった。


「なるほど、キックは期待できそうだな」
「ブホッ!!」

直人のあまりにも的確すぎる指摘に思わず噴き出した。

美佳が少しスピードを落として、直人のそばまで戻ってきた。

これだと

     美佳・直人・俺      の並び順になる。


納得がいかない。


「敵に回さない方がいい程度にね。
 それで、どうする?あたし的には…」
「東北に行こうぜ」

美佳の意見を聞く前に直人が口出しした。

お前こないだ俺に『人の話は最後まで聞け』って言ってなかったか?


「人は人、俺は俺だ。
 東北なら、少なくとも東京より安全だし、隠れようと思えばいくらでも隠れられる」

おい、またテレパシーかよ。

って直人もしかして感染してる系??? んな訳ないか…


「そうね、あたしもそう思ってたところ。
 ただ移動手段が問題なのよね…」
「電車動いてるの?」

「さあね」と、直人は地図らしきものを見始める。

「おい、なんだそ「地図だ」」

ちょっちょっ、人の話かち割りすぎだぞお前。


「今あたしたちがいるのはここね」

美佳は直人の地図にのっている、『小島百貨店』を指差した。


地図から目を上げて前を見ると、確かに道路の右側に、『小島百貨店』掲示があった。


「まずは新幹線をあたるべきだな。東京駅行ってみようぜ」
直人が美佳の指がある地点より少し右上のほうにある東京駅を示す。

「こんな時に新幹線なんて走ってるか?」

ただでさえ、俺たちのいるこの通りには俺たちのほか誰もいない。


「ま、取り敢えず行ってみましょ、それで動いてなかったら他の手段を探せばいいわ」

美佳は直人寄りだ。



あぁ、そう。


好きにしてくれ。