現実逃避超空間
作者/ 風そら

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「どうだ?この様を見ろ。
俺だってただで幕僚長の座についたわけじゃぁねぇんだよ。
それでも戦うか?残りの一人は捕まっちまったみてぇだけどなぁ」
そこで悠斗は眉をピクリと持ち上げた。
「てめぇ直人に何しやがった……!」
「あぁ、そうそう直人君。彼、一人で甘味を吹っ飛ばしたんだぜ?
あいつも特別課に配属されるのはそう簡単じゃなかっただろうになぁ…」
それで悠斗はなんとか理解した。
直人は金時と、もしくはもう一人のいかつい男と戦って、全力を尽くしたがしかし、とらえられた。
――待ってろ、すぐ迎いに行くからな、けど――
「……まずはお前をぶっとばす」
「やってみな。その代り、君が負けたらこいつの命はぽっとんだ」
伊藤が言い終わらないうちに悠斗は走っていた。伊藤の手前で跳ね上がり、上から頭を殴りたたく。
『バチンッ!!』
だが、黒い稲妻はそれを跳ねのけるようにして悠斗の身体を吹き飛ばす。
悠斗はそのまま前にバランスを崩し、伊藤の後ろにどてっと倒れた。
「情けねぇぞ」
「……ッ!」
すぐさま立ち上がり、今度は足に炎の帯をかけながら右足で回し蹴りを食らわせる。が――
『パシ』
「!!!」
伊藤は軽くそれを手で受け止めると、バチンッと黒い雷を飛ばした。
「っがッ!!!」
雷は炎をかき消し、悠斗の足を包んだ。当然それはTSウィルス特有の効果を示し――
「ッ!!」
伊藤はそのまま悠斗の足を持ち上げ、投げつけた。後ろに投げ飛ばされ、悠斗は受け身の体勢もとれずに落下する。
まだ回復が完了していない右足をかばいながら、左足でバランスをとると、悠斗は伊藤を睨んだ。
ふっと伊藤は笑う。
「通常、Tエネルギーは互いに反発しあうし、もしも強制的にぶつかる時があれば相殺する。
Tエネルギーに高度な圧力をそれにかけると、通常金色に輝く炎は赤、そして紫、最終的には黒に変化する。
それは通常より高密度なエネルギーが凝縮されているため、通常のエネルギーは飲み込んでしまう。
が、それでも今までお前が俺に対抗できたのは『質』に対して『量』で対抗してきたからだ。
つまり、俺が国産黒沢牛ならお前はオーストラリア産の安い肉。放出量はもちろんお前の方が多い。
、、、
だからお前は俺の攻撃を止めれたし、逆に攻撃に出ることもできた。
だが、最終形態である黒にさらに圧力をかけると、エネルギーの存在が非常に不安定になる。
そうして発生するのが、Tエネルギーの限界突破型、『雷』だ。
エネルギー圧は通常金炎の約2500倍。つまり、俺の雷1に対してお前の炎は2500必要になる。
いくらなんでもそれは不可能だ。だからこそ、俺はこの限界突破を訓練し、身に着けた」
「……何がいいたい」
悠斗が唸ると伊藤は両手にバリバリッと稲妻を発生させた。
「勝つためならば俺は俺を超える。だからお前に勝ち目はない」

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