現実逃避超空間
作者/ 風そら

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「うぉりゃあッ!!」
「な!?」
電柱の裏に身をひそめていた直人は、間一髪で巨大な棍棒をひらりとかわした。
電柱に派手に衝突した棍棒は、土埃に隠れる。と、
「おいマジかよ」
直人はつぶやいた。
電柱は根本からぐしゃっと言うように潰れ、道路に横たわった。
破壊音と、電流のショートする音が響き渡る。
当たっていれば即死間違いない。
直人は冷や汗をかきながらデイソンの方を見つめた。
デイソンはニヤリと笑って棍棒を肩にかけた。
「幻影鎚、それがこいつの名前だ」
「なっ」
幻影の七つ武器…!?
直人の思考が停止した。が、すぐにフル回転で労働を始める。
どうやって入手した?いやそれが問題なんじゃない幻影の七つ武器は現実世界では抗TPウィルスを大量注入したもので人間の体に触れることはできないはずじゃ、いやあたったのは電柱だ筋は通るしかしそれを俺にくらわせる意味は全くと言っていいほど
「何故だか知りたいか」
デイソンは口を開いた。
直人は押し黙って相手の出方を伺う。
「幻影の七つ武器はな、本人の意思で当てるか当てないか決められるんだ」
「どういう…」
「つまり、デイソンの考え一つで君にも当たる訳、分かる?」
金時は直人に人差し指を突き付けた。
二人はうすら笑う。
だが、直人の考えていることは別の事だった。
「美佳のも切れるんじゃ…」
「あ?」
金時は直人の独り言に敏感に反応する。
が、直人はそれを無視して拳銃を放り捨てた。
そして、
「「!?」」
直人は上着を脱ぎ捨てた。
上着と言うのは勿論防弾チョッキの事である。
つまりそれは自分を保護する盾を捨てるのと同意義だった。
やがて、直人は自分を取り巻くすべての盾を捨てると笑った。
直人は最後に地上にいた日以来、初めてTシャツ姿になる。
「命を賭ける、ということか?」
デイソンはほほ笑んだ。
直人は返事のかわりにポケットからもう一つの銃を取りだした。
「本気で行くぞ」

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