現実逃避超空間
作者/ 風そら

29
「奴ら、東北に行く気だな…」
若い男が言った。
「東北って言ったら裏世界の入り口のほうか」
部下の見張りから戻ってきたジャケットの男が、高速に移動する三つの赤点を遠目に見つめながら言った。
「意図的にそっちに向かってる可能性も0ではない、な」
声が低めの男が煙草を吸いながらつぶやいた。
「一人は抗ウィルスを持ってることだしな…」
「裏世界に入られたら後々面倒だ。もう始末した方がいいんじゃ…」
「いや、幕僚長の指示が第一だ。あと30分…いや、20分で俺は行く」
若い男の提案を遮ってジャケットの男が言った。
「おいおい、殺すなって指示だぜ?あんたが行ったらクレーターが出来ちまうぜ」
ドスの利いた声で男は言う。
「安心しろ、俺は雑魚相手に本気はださねぇ。
それより、交渉部からの報告は?」
ジャケットの男は事務椅子に倒れこんだ。
「政府側はまだ金で解決しようとしているらしい。
『例』の物はまだ手に入ってないとのことだ」
「チッ、博士は昏睡するは政府は渋るわでなんも進展がねぇな。
政府側は国民になって言ってるんだ?」
「謎のテロリストが政権をよこせと言っている…と」
管理室の中にジャケットの男の笑い声が響く。
「政権をよこせ、か… そりゃぁ渋っても仕方ねぇわな」
ジャケットの男は後ろを振り返ると黙り込んだ。
(次はいよいよアメリカか…?)

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