現実逃避超空間

作者/ 風そら



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「どういうことだ…」

直人は美佳のパソコンに表示されるルティアの情報を見ながらつぶやいた。

「敵か、味方か、はっきりいったら敵ね」
美佳は言った。


「もう探す意味もないだろ」

「いや、あるわ」
直人が後ろをくるりと振り向いたところを美佳が止める。

「なんで」
直人は怪訝な顔をする。

「ルティアはCSAにいた。
 CSAは【SPACE】内にある制御センターを制圧した可能性が高い。となれば…」

直人は察した。

「計画の内容を知っている…か、」

美佳はこくりとうなずく。
「コンバーターは何なのか、何をするつもりなのか、それと…裏世界が存在する本当の目的…」

「TPウィルスの試験場じゃなかったのか」
直人は聞いた。


「そう書かれてるだけ。よくよく考えたら、ウィルス試すのに裏世界を使うということは
 『ウィルスを手にする前に』制御センターを制圧したってことよ」
「なるほど、それもそうだな」

直人は今まで気付かなかったことにようやく気付かされた。


「もしかしたら制御センターの誰かが、いや、もしかしたら全員がCSAなのかもしれないわ…」

「……」

沈黙が流れる。

それを、解消すべき第一声は美佳のものだった。
「取りあえず今日は休みましょう。一日で起きたことが多過ぎ」

「だが奇襲される可能性が高くならないか?
 奴らは俺らの居場所を知っているなら、寝息に潜んで…ってことも――」

「大丈夫、さっきヘルメットのIDを削除して電波妨害したから」
美佳はにこやかに言うと、そこらへんの建物に入って行った。


よくやるよ…





直人はもう半分以上沈んだ太陽を見て、悠斗のことを思った。





あいつ、大丈夫かな