現実逃避超空間

作者/ 風そら



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「……庄司、君は一体何を言っているんだい?」
テレスが意味が分からないといった様子で尋ねる。それには答えず、庄司は悠斗に近づいてきた。
視力が悪い悠斗には今わかったことだが、庄野は目に包帯を巻いていた。

「な、なんだよ……」
まるで生ごみを避けるかのように、悠斗はぐいーっと上半身を後ろにそらす。庄司の顔は目の前だ。
白い包帯が恐怖心を駆り立てる。

「あんた、名前は?」
「い、あ、悠斗、だけど……」
「イ・ア・ユート……いい名前」
「あの、違うんですけど…」

悠斗の言葉には耳もくれず、庄司はくるりと後ろを向いた。しかしその時。

「――!!」
庄司はまたこちらを向くと、悠斗の額に人差し指を突きつけた。何をしてるんだと考える。が――


『ドゴオオオオオォォォォンッ!!!!!!!』




バズーカでも撃ち込まれたか。悠斗の身体は道路を挟んだ反対側のビルに激突した。
砂煙が上がって、テレスはため息をついた。


「可愛い女の子はそういう卑怯な手を使うもんか」
「いいでしょ、面倒くさいし。間違ってるとでも?」
「いいや、むしろ好きだね」

テレスはにやりと笑うと巨大な手裏剣を取り出して構えた。

「油断するなよ、まだ生きてる」
「何で分かるの」

庄司が不機嫌そうな口元でこちらを向いた。言うまでもない。


「僕が僕だからだ」

テレスはそういうと、未だ煙を上げるビルの外壁に向かって声を上げた。

「さっさと出て来いよ、まだいけるだろう?パーティーはこれからだぜ?」









ガコッ、と巨石が落ちる音と共に、煙の中からポッと火が灯った。