現実逃避超空間

作者/ 風そら



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        TSウィルス、およびTエネルギーについて
                                 CSA研究部ウィルス研究班班長鬼嶋誠


1)TSウィルス開発

  TSウィルスは、TPウィルスからTエネルギー(後述)を直接的に発生させるように改良したものである。
  通常TPウィルスは、宿主細胞内に侵入したのち、その内部に「反応炉」を形成する。
  TPウィルスは宿主細胞内で自己的に死滅し、そのエネルギーを利用して反応炉を動かしている。
  反応炉はそれをTエネルギーを変換させ、細胞内部に蓄積させたり、細胞自体の強化に使用する。

  Tエネルギーが限界を超えて蓄積されると、細胞壁を破壊し、外部へと流出する。
  流出したTエネルギーは体内を駆け巡り、感染者の超能力の原動力となる。

  しかし、このTエネルギーは発生効率が悪く、エネルギー消費を抑える為、
  決まった能力しか発揮しないという性質がある。
  そのため、感染者は一つ、細胞強化内容も一つと限られる。

  TSウィルスは、宿主細胞内に反応炉を形成せず、ウィルス自体が体内にTエネルギーを所持している。
  そして、ウィルスが増殖するとともにエネルギーも増殖、排出される。
  TSウィルス一個が一回の増殖を行うたびに、Tエネルギーは約74倍に増加する。

  この莫大なTエネルギーは、超能力を制限することを必要としないため、
  いくらでも超能力が使えることになる。


  しかし、それに反してリスクは大きい。
  まず、TSウィルス自体が非常にもろいため、莫大なエネルギーを発生させることで宿主細胞が抵抗し、
  TSウィルスを死滅させてしまう可能性が大いにある。
  無事エネルギーを安定して生産できるのは、10億人に一人と考えられる。

  また、感染してもなんでもかんでも出来るという訳ではなく、
  TPウィルスと違い、一つの超能力に定まらない、つまり、エネルギー自体はただ体内を泳ぐだけになる。
       、、、
  それを超能力として活かすための方法は、現在判明していない。

  ただ、超能力として利用できなくても、エネルギー自体を体外に放出することで、
  他生物の細胞を破壊し、死に至らすことも可能である。
  また、細胞強化の面に関してはTPウィルスとは比べ物にならず、
  筋力増加、柔軟化など、様々な可能性がある。

  また、ウィルスが異常増殖し、Tエネルギーが通常の20倍近く(エネルギー増加率144000%)
  で上昇することをブースト(後述)という。


2)Tエネルギー

  Tエネルギーは、TPウィルス、TSウィルスによって間接的、
  もしくは直接的に作られるエネルギーである。
  一部の場合を除いて肉眼では視認できず、感染者以外の細胞に触れた場合、その細胞は破壊される。
  (厳密には、Tエネルギーが細胞に侵入した際に細胞が拒否反応として
   エネルギーを細胞の外へ出そうとしたときに、細胞壁が破壊される)

  通常Tエネルギーは感染者の体内を巡回しているが、
  感染者は意識することによって、Tエネルギーを体外に放出できる。
  放出されたTエネルギーは通常拡散するが、これも意識することで球状にまとめたり、
  レーザーのようにして射出できる。
  しかし、ブースト(後述)のように、全身から長時間放出し続けることは困難極まりなく、
  ブーストと同じ効果を得ることはできない。
  別の感染者同士のTエネルギーが接触した場合、お互いに反発しあう。

  また、なんらかの理由によりTエネルギーが超能力エネルギーに変換された場合、
  TPウィルスと同様な超能力が得られるが、いまだ確認できていない。

  Tエネルギーが異常増加し、体内で管理できず、無意識に体外に放出される現象をブーストと呼ぶ。
  これによって放出されたTエネルギーは、黄色く染色され、視認できる。
  つまり、遠目で見ると黄色い炎をまとっているように見える。

  ブーストの発生条件ははっきりしていないが、
  TSウィルスが何らかの理由で異常増殖した場合に発生しやすい。
  また、理論上ではTPウィルス感染者でもブーストは起こりうるが、
  Tエネルギーの大半は反応炉で超能力エネルギーに変換されてしまうため、確率は0に近い。

  ブースト状態になると、通常以上のTエネルギーの発生や筋力増加が可能になるが、
  人体に負担をかける為、効果時間は短い。
  また、Tエネルギーがさらに高濃度になり放出されると、赤や紫に偏食する場合がある。

  




CSA内でただ一人、TS感染している人物、伊藤俊介へのウィルス投与から、
4週間の実験記録を Report1-4 にまとめている。