現実逃避超空間

作者/ 風そら



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「なっ……」
「てめぇらはッ!」
おそらくCSAの下っ端と思われる二人組の男が直人たちの前でたじろいだ。
「俺らはちょっと先を急いでるんだ。どいてくれ」
直人は銃を取り出さずに問いかける。
美佳もうなずいた。
「ふ、ふざけるな!ルティア以外の人間をここから先には行かせねぇ!」
『ドシュッ!!』
二発の弾丸が直人の両手から発射され、見事二人の肩にそれぞれ命中。
崩れ落ちる男を見やりながら直人は後ろの二人に呼びかけた。
「いくぞ」
美佳と咲子は直人の背中を追った。

「小島百貨店はどっちだ?」
しばらく走ったところで直人は足を止めた。
「この先三つ目の交差点を左よ」
美佳が携帯のGPSアプリを操作しながら答える。
行くか、と走ろうとしたその時。

「そうは行かないんだよね~?」
甘い声と共に上方から火線が降ってきた。直人は間一髪でそれをステップでよける。
先ほどいた足元の地面に、穴が開いていた。
「ッ!」
後は反射だ。
狙いを定めずに火線の発生源に拳銃を向け、放つ。
コンクリに銃弾が跳ねる乾いた音が響いた。
金時がバッと屋上から降ってきて、にやりと笑った。

「よう」
目の前から歩いてきたのはデイソンだった。
またこいつらか……と内心苦笑する。
「美佳、咲子。先行っててくれ」
「「わかった」」
美佳と咲子は一瞬にして消える。双方、足にかけては紙一重だ。
「おいおい、まさか俺ら相手に一人で挑むきじゃねぇだろうな?」
デイソンは嘲笑った。
確かに前に金時一人に勝てはしなかった。だが、今は違う。
直人は全神経を集中して拳銃を上に放った。
クルクルと回転しながら拳銃は再び直人のもとへと落ちてくる。

パッとそれを握りしめて――笑う。いける。



因縁の最後の対決が、今、始まる。